Electrolyte depletion syndromeを呈した直腸絨毛腫瘍の1例
症例は72歳,男性.2004年7月,頻回な下痢と嘔吐を認め,近医を受診した.腎機能障害と電解質異常を指摘され,精査目的に当院内科紹介,入院となった.入院時は著明な脱水と電解質異常(BUN 80.9mg/dl, Cr 2.6mg/dl, Na 121mEq/l, Cl 87mEq/dl, K 2.1mEq/dl)を認めた.下部消化管内視鏡検査では,直腸に多量の粘液分泌をともなう全周性の直腸腫瘍を認め,生検にて絨毛腺腫内癌の診断を得た.補液にて電解質異常を補正したのち,当科にて同年9月1日腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本では直腸に8×14cm大の全周性の絨毛腺腫を認め,病理所見は粘膜にとどま...
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Published in | 日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 61; no. 1; pp. 46 - 50 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本大腸肛門病学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0047-1801 1882-9619 |
DOI | 10.3862/jcoloproctology.61.46 |
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Summary: | 症例は72歳,男性.2004年7月,頻回な下痢と嘔吐を認め,近医を受診した.腎機能障害と電解質異常を指摘され,精査目的に当院内科紹介,入院となった.入院時は著明な脱水と電解質異常(BUN 80.9mg/dl, Cr 2.6mg/dl, Na 121mEq/l, Cl 87mEq/dl, K 2.1mEq/dl)を認めた.下部消化管内視鏡検査では,直腸に多量の粘液分泌をともなう全周性の直腸腫瘍を認め,生検にて絨毛腺腫内癌の診断を得た.補液にて電解質異常を補正したのち,当科にて同年9月1日腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本では直腸に8×14cm大の全周性の絨毛腺腫を認め,病理所見は粘膜にとどまる腺癌をともなった直腸絨毛腫瘍であった.術後経過は良好で,電解質も正常化し臨床症状も消失した.腫瘍表面より粘液が多量に分泌され,電解質異常や重篤な脱水などを認めるElectrolyte depletion syndrome(EDS)を呈したと思われた.EDSをともなう絨毛腫瘍は比較的稀な病態であり,文献的考察を加えて報告する. |
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ISSN: | 0047-1801 1882-9619 |
DOI: | 10.3862/jcoloproctology.61.46 |