輸血後のドナー白血球の動態と患者血中の免疫担当細胞の変化について

血液成分不足の患者にとって輸血は必要不可欠の治療法である. しかし, 輸血は生きた臓器である血液をそのまま輸注する一種の臓器移植である. それ故, 一部の症例では肝炎などの感染症や輸血後移植片対宿主病(graft versus hos tdisea-se;GVHD), 発熱, 急性呼吸不全, アナフィラキシーなどの免疫反応が生じることがある1)2). 特に輸血後GVHDは最も重篤な輸血の副作用のひとつであり, わが国の輸血による急性死亡の第1の原因となっている. GVHDは輸血されたリンパ球が排除されずに, 生着, 増殖し, 宿主を攻撃, 傷害する疾患である. 従来GVHDは免疫不全のある患者...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 4; pp. 473 - 479
Main Authors 古畑, 義章, 田所, 憲治, 豊島, 宏, 矢作, 裕司, 中島, 一格, 内田, 茂治, 十字, 猛夫, 村岡, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1998
日本輸血学会
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.44.473

Cover

More Information
Summary:血液成分不足の患者にとって輸血は必要不可欠の治療法である. しかし, 輸血は生きた臓器である血液をそのまま輸注する一種の臓器移植である. それ故, 一部の症例では肝炎などの感染症や輸血後移植片対宿主病(graft versus hos tdisea-se;GVHD), 発熱, 急性呼吸不全, アナフィラキシーなどの免疫反応が生じることがある1)2). 特に輸血後GVHDは最も重篤な輸血の副作用のひとつであり, わが国の輸血による急性死亡の第1の原因となっている. GVHDは輸血されたリンパ球が排除されずに, 生着, 増殖し, 宿主を攻撃, 傷害する疾患である. 従来GVHDは免疫不全のある患者で発症することが知られていたが, わが国では, 一見免疫不全のない開心術患者や担癌手術患者などの外科系患者で多く発症している3)~6). また, 輸血により術後感染症や癌の再発が増えると言う報告もある7)~10). これは輸血による免疫能の低下が原因と考えられており, その主な原因物質は血液製剤中に含まれる白血球と考えられている. 11~17). 輸注リンパ球の動態や, 手術や輸血による患者の免疫能も変化を知るころは, 輸血後GVHDの病態の理解と, 副作用予防の上で重要と考えられる. 我々は今回, 患者体ネイでの輸血白血球の動態, 及び患者末梢血リンパ球各分画の変移について検討したので報告する.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.44.473