活動日記を併用したリハビリテーションにより,痛みや自発性の低下が改善した重度廃用症候群の一症例
【背景】身体の不活動は廃用症候群を発生させ,筋力や運動耐容能の低下,痛みの増悪や新たな痛みの発生,精神心理機能の低下といった様々な症状を呈する。一方,活動日記は活動量と疼痛を能動的に管理しながら目標を達成するツールとして活用されている.今回,重度廃用症候群により身体機能と自発性の低下を認めた症例に対し,活動日記を併用したリハビリテーション(以下,リハ)を進めた結果,良好な成績が得られたため報告する.【症例】症例は,70 歳代女性(身長153 ㎝,体重60.4 ㎏,BMI25.8),主病名は仙骨部・踵部褥瘡による廃用症候群であり,甲状腺機能低下症,脱水症,右変形性膝関節症を併存していた.入院以前...
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          | Published in | Kyushu physical therapist Congress Vol. 2021; p. 111 | 
|---|---|
| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
    
        2021
     Kyushu Physical Therapy Association  | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 2434-3889 | 
| DOI | 10.32298/kyushupt.2021.0_111 | 
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| Summary: | 【背景】身体の不活動は廃用症候群を発生させ,筋力や運動耐容能の低下,痛みの増悪や新たな痛みの発生,精神心理機能の低下といった様々な症状を呈する。一方,活動日記は活動量と疼痛を能動的に管理しながら目標を達成するツールとして活用されている.今回,重度廃用症候群により身体機能と自発性の低下を認めた症例に対し,活動日記を併用したリハビリテーション(以下,リハ)を進めた結果,良好な成績が得られたため報告する.【症例】症例は,70 歳代女性(身長153 ㎝,体重60.4 ㎏,BMI25.8),主病名は仙骨部・踵部褥瘡による廃用症候群であり,甲状腺機能低下症,脱水症,右変形性膝関節症を併存していた.入院以前は独居でADL は自立していたが,X -1 ヶ月より体動困難となり,X 日に自宅内にてショック状態で発見され,当院へ救急搬送された.【経過・結果】X+3 日よりリハを開始し,初期評価では,MMSE は16 点で認知機能は低下しており,自力体動もなく自発性の低下も認めた.身体機能は,筋力は四肢と体幹においてMRC スケールでGrade2 まで低下しており,仙骨部と右膝部にNRS8 ~ 10 の強い動作時痛が生じていた.筋力低下と疼痛のため,基本動作は全介助,ADL 動作はm FIM21 点で,食事と整容以外に全介助を要した.その為,廃用症候群および不活動の改善を目的として早期離床を図りつつ,筋力増強運動や有酸素運動等の運動療法や基本動作訓練,座位訓練,立位訓練,歩行訓練と身体機能に合わせて段階的にリハを実施した.コミュニケーションは可能だが,認知機能低下や自発性の低下により,運動学習が不十分な一面があり,自己認識を促すために写真や鏡でのフィードバック学習を実施したがあまり効果は得られなかった.そこで,前日できたことを振り返り自分の能力を再認識してもらうために活動日記を導入し正のフィードバックを与え,意識変容を促すこととした.X+4 週より立位動作の介助量軽減に伴い,全介助での歩行訓練を開始した.歩行開始時は,「歩かされた」と受動的な発言が多かったが, X+6 週より歩行器歩行訓練へ移行した際には,「できるようになってきた」と前向きな発言が増えていた.しかし,歩行に対する自信が不十分であったため,X+8 週より歩数計を装着し歩数のモニタリングも行った.歩数の増加に伴い「2000 歩は歩かないとね」と自発的に目標設定も行うようになった.また,病棟内の移動も車椅子全介助から歩行器歩行へと変化した.最終評価(X+10週)では,認知機能はMMSE で28 点まで改善した.筋力は全身的にMRC スケールでGrade4 まで向上した.動作時痛は右膝部にNRS2 のみとなった.基本動作は自立し,ADL はm FIM で48 点まで改善した.押し車歩行,階段昇降も見守りで可能となり,1 日の歩数は3000 歩を超えていた.その後,急性心筋梗塞を発症したが軽快し,ADL は低下することなくサービス付き高齢者向け住宅へ退院した.【考察】痛みの増悪や自発性の低下を伴う重度廃用症候群の患者に活動日記を導入することで,「歩かされた」といった受動的な発言から,徐々に「2000 歩は歩かないとね」など自発性のある発言が出現し,行動変容を伴う活動量やモチベーションの向上がみられた.以上のことから,本症例においては活動日記を併用したリハは,能動的な活動を促進し身体機能のみならず痛みや精神心理機能の改善に有効であった.【倫理的配慮,説明と同意】本報告は,ヘルシンキ宣言に基づき個人情報が特定されないよう匿名化し,個人情報保護について本人,家族へ説明し同意を得た. | 
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| ISSN: | 2434-3889 | 
| DOI: | 10.32298/kyushupt.2021.0_111 |