「ウェルウォークWW-1000」における脳卒中片麻痺者の認知・高次脳機能障害も含めた歩行能力改善因子の検討

近年,「歩行支援ロボット」という新たな治療介入が普及しており,その中に「ウェルウォークWW-1000(以下WW)」がある.WW は麻痺側下肢の荷重と振り出し量をアシストし,視覚と聴覚のフィードバック(以下FB)機能を有している.先行研究では,歩行改善期間の短縮や歩行の異常パターン軽減に有効であるとされているが,これらの対象は認知・高次脳機能障害を有する者を除外している.しかし我々は拒否がみられない症例に対してWW での歩行練習を実施している.その中で,認知・高次脳機能障害があっても歩行能力が向上することを経験した.そこで本研究では,脳卒中片麻痺者の回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)入棟...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2022; p. 105
Main Authors 東, 洋介, 宮永, 陽亮, 河野, 寛一, 森下, 元賀, 倉爪, 康裕, 平川, 裕紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2022
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2022.0_105

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Summary:近年,「歩行支援ロボット」という新たな治療介入が普及しており,その中に「ウェルウォークWW-1000(以下WW)」がある.WW は麻痺側下肢の荷重と振り出し量をアシストし,視覚と聴覚のフィードバック(以下FB)機能を有している.先行研究では,歩行改善期間の短縮や歩行の異常パターン軽減に有効であるとされているが,これらの対象は認知・高次脳機能障害を有する者を除外している.しかし我々は拒否がみられない症例に対してWW での歩行練習を実施している.その中で,認知・高次脳機能障害があっても歩行能力が向上することを経験した.そこで本研究では,脳卒中片麻痺者の回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)入棟時の各評価に加えて,認知・高次脳機能面を含めた項目から歩行改善の因子とそのカットオフ値を検討する事とした.【対象】対象は,当院の回リハに入院した脳卒中片麻痺患者で,WW を10 回以上使用し,Functional Independence Measure(以下FIM)歩行4 点以下,Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)下肢Ⅳ以下,歩行練習に長下肢装具が必要な方とした.除外基準は,指示に従えない重度の認知・高次脳機能障害を認める方(何らかの方法で自分の意志を伝えられる方は包含)とした.【方法】回リハ入棟時の調査項目は,年齢,性別,麻痺側,在棟日数,WW 実施回数,BRS・脳卒中機能障害評価表の麻痺側下肢運動/ 感覚/ 筋緊張/ 体幹,FIM 運動項目,FIM 認知項目・ミニメンタルステート検査(以下MMSE),Catherine Bergego Scale の観察評価(以下CBS)・TMT日本語版(以下TMT)とした.加えてWW で算出される初回介入時の麻痺側最大荷重量・膝伸展最大トルク・重複歩距離・立脚時間・遊脚時間・全荷重量とした.退院時の最終歩行レベルを監視以上群と要介助群に分類し,群間比較後に有意差が見られた項目を独立変数にし,二項ロジスティック回帰分析を実施した.またROC 曲線を用いてカットオフ値を求めた.有意水準は5%未満とし,統計解析はERZ(Ver1.42)を用いた.【結果】解析対象者は113 名で監視以上群58 名,要介助群55 名であった.群間比較では,年齢,性別,麻痺側,在棟日数,WW 実施回数,WW の各パラメータ以外の項目に有意差が見られた.最終歩行レベルを目的変数とした二項ロジスティック回帰分析では,年齢(オッズ比0.880,95%信頼区間0.813 −0.952,P <0.01),TMT-A(オッズ比0.964,95%信頼区間0.938−0.991,P <0.01)は独立した予測因子であった.カットオフ値は,年齢68 歳(感度0.763,特異度0.630,AUC0.752),TMT-A148 秒(感度0.847,特異度0.852,AUC0.9)であった.【考察】年齢は脳卒中患者の歩行自立の関連因子とする報告(近藤ら1999,平野ら2014)が多く,先行研究と同様の結果となった.WW は視覚や聴覚によるFB 情報を基に,最適難易度で歩行練習を行う運動学習課題である.今回はTMT-A が抽出されたため,課題に集中できる注意の持続が必要であると考える.また歩行自立の阻害因子とされているCBS は抽出されなかった.セラピストがWW のパラメータを調整することで,半側空間無視の影響が少ない環境での歩行練習が行えた可能性がある.【まとめ】WW 使用者の回リハ入棟時における歩行改善因子は年齢とTMT-A であり,カットオフ値は年齢68 歳,TMT-A148 秒であった.本結果は,WW 適応症例における判断基準の一助になる可能性がある.【倫理的配慮,利益相反】本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,当院の倫理審査委員会の承認を得て行われた(承認番号:20220515).研究内容を院内掲示およびホームページに掲載し包括同意を得た.利益相反は.
Bibliography:P-33
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2022.0_105