車いすスポーツ研究と競技サポート

今年2020東京パラリンピックが開催され、国内でパラスポーツが注目される好機となった。パラスポーツにおける理学療法科学の貢献は、パフォーマンスの向上だけでなく、スポーツ障害の予防、クラス分けの妥当性やスポーツ効果の検証など多岐に及ぶ。車いすスポーツは、競技を通して駆動・停止・方向転換を繰り返すため、車いす操作を効率よく行うことが競技パフォーマンスの向上に直結する。また車いすスポーツを行う人の半数以上に慢性関節痛があるとの報告もあり、障害予防の観点からも車いすのセットアップや駆動フォームの検討は重要である。今回は、これまで行ってきたクラス分けと車いすスキルの関係、駆動フォームの研究について触れ、...

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Bibliographic Details
Published inJapanese Journal of Sports Physical Therapy Vol. 1; no. Supplement; p. S17
Main Author 信太, 奈美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本スポーツ理学療法学会 2021
Japanese Society of Sports Physical Therapy
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ISSN2758-4356
DOI10.57495/jjspt.1.Supplement_S17

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Summary:今年2020東京パラリンピックが開催され、国内でパラスポーツが注目される好機となった。パラスポーツにおける理学療法科学の貢献は、パフォーマンスの向上だけでなく、スポーツ障害の予防、クラス分けの妥当性やスポーツ効果の検証など多岐に及ぶ。車いすスポーツは、競技を通して駆動・停止・方向転換を繰り返すため、車いす操作を効率よく行うことが競技パフォーマンスの向上に直結する。また車いすスポーツを行う人の半数以上に慢性関節痛があるとの報告もあり、障害予防の観点からも車いすのセットアップや駆動フォームの検討は重要である。今回は、これまで行ってきたクラス分けと車いすスキルの関係、駆動フォームの研究について触れ、新たに車いすバスケットボール選手を対象に、異なる車いすを使用した時のパフォーマンスを比較し、競技用車いすのセットアップがパフォーマンスに与える影響を調査したので報告する。一方、車いすスポーツを日常的に楽しむ人々は対麻痺者や四肢麻痺者などの脊髄を損傷した人が多く、このような脊髄損傷者は損傷レベルによって自律神経障害があり、血管運動制御と発汗能力が低下する。そこで暑熱環境下における脊髄損傷者のスポーツ実施において、自律神経障害の影響を調査することを目的に、頚髄損傷者と胸・腰髄損傷者の競技前後の体表温度と心拍数の変化を比較し、スポーツが脊髄損傷者の身体に及ぼす影響を明らかにした。結果は、競技後の頚髄損傷群の体温は胸・腰髄損傷群より上昇していたが、発汗可能な顔面の温度においては差がなかった。これらは競技力の高い鍛錬された選手に着目した観察研究であるが、パラスポーツにおいては、健康維持・増進のライフワークとしてのスポーツ実践のため、彼らの生理学的特徴を理解し、安全に実践するための様々なサポートが必要である。
ISSN:2758-4356
DOI:10.57495/jjspt.1.Supplement_S17