ストレプトリジンSによる溶血作用

SLS複合体のpIは5.4, 分子量は32,000であり, 非還元状態でも溶血活性を示した. SLSおよびSLOの溶血作用機序はすでに報告されているが, K+およびHbの遊離態度より機序の差異を確認した. また, 溶血保護物質を用いた実験からは dextran 4以上の分子径でHbの遊離が阻止された. このことよりSLSの惹起する溶血では, 膜のイオン透過性変化過程を経て, 膜内への水の流入が開始する段階では膜に孔が形成されている可能性が示唆された. また, 孔径は種々分子径の異なる物質による溶血保護効果の成績より, 約3.5nmと測定された. これまでSLSによる溶血では膜上に孔様構造は認め...

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Published in生物物理化学 Vol. 38; no. 4; pp. 227 - 231
Main Authors 小林, 貞男, 菊池, 佐知子, 吉原, 英児, 鈴木, 潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本電気泳動学会 1994
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ISSN0031-9082
1349-9785
DOI10.2198/sbk.38.227

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Summary:SLS複合体のpIは5.4, 分子量は32,000であり, 非還元状態でも溶血活性を示した. SLSおよびSLOの溶血作用機序はすでに報告されているが, K+およびHbの遊離態度より機序の差異を確認した. また, 溶血保護物質を用いた実験からは dextran 4以上の分子径でHbの遊離が阻止された. このことよりSLSの惹起する溶血では, 膜のイオン透過性変化過程を経て, 膜内への水の流入が開始する段階では膜に孔が形成されている可能性が示唆された. また, 孔径は種々分子径の異なる物質による溶血保護効果の成績より, 約3.5nmと測定された. これまでSLSによる溶血では膜上に孔様構造は認められないと報告されてきたが, 溶血保護効果の成績からは孔の形成が強く示唆された. さらに, SLSの示すHEは3.49, SLOは9.00と大きな差異が認められることより, HEは溶血機序解析の指標となりうることが明らかになった.
ISSN:0031-9082
1349-9785
DOI:10.2198/sbk.38.227