開心術症例における輸血後肝炎の遠隔期予後
輸血後肝炎(Posttransfusion hepatitis, PTHと略)は心臓外科領域における重大な合併症であり, 供血者のB型肝炎ウイルス抗原(HBsAg)スクリーニングが開始された後も, 開心術症例の16~24%に非A非B肝炎が発症している1)~4). このため各施設で種々の対策が試みられ, 教室でも, 供血者スクリーニングにおけるS-GPT上限値の引き下げやグアナーゼ値の導入4), 自家血あるいは無輸血開心術の推進など, その発症予防に努めてきた. 最近米国Chiron杜グループによるC型肝炎ウイルス(以下HCVと略)の同定5)および抗体測定法の開発6)に続き, わが国でいち早く供...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 38; no. 5; pp. 607 - 612 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
1992
日本輸血学会 |
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ISSN | 0546-1448 1883-8383 |
DOI | 10.3925/jjtc1958.38.607 |
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Summary: | 輸血後肝炎(Posttransfusion hepatitis, PTHと略)は心臓外科領域における重大な合併症であり, 供血者のB型肝炎ウイルス抗原(HBsAg)スクリーニングが開始された後も, 開心術症例の16~24%に非A非B肝炎が発症している1)~4). このため各施設で種々の対策が試みられ, 教室でも, 供血者スクリーニングにおけるS-GPT上限値の引き下げやグアナーゼ値の導入4), 自家血あるいは無輸血開心術の推進など, その発症予防に努めてきた. 最近米国Chiron杜グループによるC型肝炎ウイルス(以下HCVと略)の同定5)および抗体測定法の開発6)に続き, わが国でいち早く供血者に対するHCV抗体陽性血スクリーニソグが開始される7)など, PTHの発症予防面に大きな進歩がみられ, 今後PTH発生率の有意の低下が期待されている. しかし, すでにPTHに罹患した患者の長期予後に関しては, 非A非B肝炎の慢性化 率が高く, 遠隔期に肝硬変, 肝癌への移行の危険性が指摘されているにも関わらず比較的開心が薄く, これまで開心術後のPTH患者に対する術後遠隔期に及ぶ追跡調査はほとんど報告されていない. |
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ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.38.607 |