内痔核に併存した直腸-肛門静脈瘤に対し経直腸超音波検査が有用であった1例

直腸-肛門静脈瘤は,門脈圧亢進症患者ではしばしば経験されるが,外科医の認知度は低く,痔核と誤認されて治療され重篤な合併症をきたす.今回われわれは,内痔核に併存した直腸-肛門静脈瘤に対し,経直腸超音波検査(TRUS)を行うことで手術に伴う出血の合併症が回避できたと考えられる1例を経験した. 症例は77歳の女性.主訴は,血便.併存疾患に肝細胞癌と肝硬変があった.繰り返す潜血便と貧血で入院となった.下部消化管内視鏡検査で直腸に1条の静脈瘤を認めたが,血管造影検査では異常所見はなかった.出血源は内痔核と判断され,手術となった.術中所見では肛門前壁に30mm大の内痔核を認めたが,TRUSで同部位に直腸静...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 71; no. 3; pp. 157 - 161
Main Authors 小池, 淳一, 後藤, 麻佑, 牛込, 充則, 甲田, 貴丸, 栗原, 奈津子, 長嶋, 康雄, 木村, 和孝, 塩川, 洋之, 船橋, 公彦, 金子, 奉暁, 栗原, 聰元, 鏡, 哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2018
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.71.157

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Summary:直腸-肛門静脈瘤は,門脈圧亢進症患者ではしばしば経験されるが,外科医の認知度は低く,痔核と誤認されて治療され重篤な合併症をきたす.今回われわれは,内痔核に併存した直腸-肛門静脈瘤に対し,経直腸超音波検査(TRUS)を行うことで手術に伴う出血の合併症が回避できたと考えられる1例を経験した. 症例は77歳の女性.主訴は,血便.併存疾患に肝細胞癌と肝硬変があった.繰り返す潜血便と貧血で入院となった.下部消化管内視鏡検査で直腸に1条の静脈瘤を認めたが,血管造影検査では異常所見はなかった.出血源は内痔核と判断され,手術となった.術中所見では肛門前壁に30mm大の内痔核を認めたが,TRUSで同部位に直腸静脈瘤に連続する肛門静脈瘤が確認され,手術は中止として硬化療法へ治療方針を変更した.TRUSは簡便で侵襲もないため,直腸-肛門静脈瘤が疑われた場合には,合併症予防の点から積極的に施行すべき検査と考える.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.71.157