人工肛門周囲に発生した壊死性筋膜炎の1例

症例は79歳,男性.直腸癌に対して低位前方切除,回腸末端での双孔式人工肛門造設術を施行した.糖尿病(HbA1c:6.0%)と肥満(BMI:28kg/m2)を合併していた.術後創部表層感染を認めたが洗浄処置のみで治癒し退院調整を行っていた.術後29日目に人工肛門周囲の発赤と疼痛を認めた.発症2日目に黒色の壊死組織を認め,発症4日目には壊死組織の増大と潰瘍形成を認め,壊死性筋膜炎と診断した.直ちに局所のデブリドマンと広域スペクトラム抗生物質の投与を行った.徐々に感染兆候は改善し,発症33日目に治癒した.壊死性筋膜炎は浅筋膜と皮下組織の壊死を特徴とする重症感染症である.初期症状に典型的なblack...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 65; no. 6; pp. 318 - 322
Main Authors 中森, 正二, 辻仲, 利政, 三嶋, 秀行, 山岡, 雄祐, 安井, 昌義, 池永, 雅一, 宮崎, 道彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2012
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.65.318

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Summary:症例は79歳,男性.直腸癌に対して低位前方切除,回腸末端での双孔式人工肛門造設術を施行した.糖尿病(HbA1c:6.0%)と肥満(BMI:28kg/m2)を合併していた.術後創部表層感染を認めたが洗浄処置のみで治癒し退院調整を行っていた.術後29日目に人工肛門周囲の発赤と疼痛を認めた.発症2日目に黒色の壊死組織を認め,発症4日目には壊死組織の増大と潰瘍形成を認め,壊死性筋膜炎と診断した.直ちに局所のデブリドマンと広域スペクトラム抗生物質の投与を行った.徐々に感染兆候は改善し,発症33日目に治癒した.壊死性筋膜炎は浅筋膜と皮下組織の壊死を特徴とする重症感染症である.初期症状に典型的なblack spotを認めており,その時点での早期のデブリドマンを行うべきであった.幸い広範な壊死に陥ることなく治癒を得た.人工肛門周囲の感染兆候に対しては壊死性筋膜炎も念頭におくべきと考えられた.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.65.318