戦前の雑誌記事にみる銘仙に関する記述とその変遷 婦人雑誌を中心に

本研究は、戦前の日本において、人々に日常着/外出着として愛用された絹織物「銘仙」への認識や位置づけの変遷を、雑誌記事中の銘仙に関する記述から明らかにする。日常着に着用されることが多かった銘仙は、明治時代後半から大正時代にかけて開発された模様表出の新技法を取り入れたり、高級品に用いる技法と図案を併用したりすることで、外出着としての商品価値を高めた。それに伴って、雑誌の誌面上での銘仙の評価軸は"丈夫さ"から"模様の美しさ"へと転化し、各銘仙産地への評価の言説も変化した。昭和時代が始まる頃には、銘仙の特集が婦人雑誌に盛んに組まれ、なかには編集部が百貨店や銘仙産...

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Published in東京家政学院大学紀要 Vol. 63; no. 63; pp. 1 - 31
Main Author 後藤, 知美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 東京家政学院大学 2023
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ISSN2186-1951
2434-7922
DOI10.32295/kaseigakuinkiyo.63.0_1

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Summary:本研究は、戦前の日本において、人々に日常着/外出着として愛用された絹織物「銘仙」への認識や位置づけの変遷を、雑誌記事中の銘仙に関する記述から明らかにする。日常着に着用されることが多かった銘仙は、明治時代後半から大正時代にかけて開発された模様表出の新技法を取り入れたり、高級品に用いる技法と図案を併用したりすることで、外出着としての商品価値を高めた。それに伴って、雑誌の誌面上での銘仙の評価軸は"丈夫さ"から"模様の美しさ"へと転化し、各銘仙産地への評価の言説も変化した。昭和時代が始まる頃には、銘仙の特集が婦人雑誌に盛んに組まれ、なかには編集部が百貨店や銘仙産地と協力し、銘仙の販売企画を展開する例もあった。昭和10年代を過ぎ、戦時体制への移行が強まると、銘仙は、その他の着物や衣類とともに古着の再利用や転用方法を取り上げる記事に登場するようになった。
ISSN:2186-1951
2434-7922
DOI:10.32295/kaseigakuinkiyo.63.0_1