予防・臨床医学理論と実践体系におけるアレルギー・免疫毒性制御:2.現代社会を取り巻く環境因子と気管支喘息発症メカニズム

背景:健康障害のメカニズムは,genetic and environmental interaction(GEi)の考え方によると,遺伝要因,環境要因,および両者の交互作用interactionで説明され,環境要因を同定し,その環境因子への曝露が心身に及ぼす影響は,毒性,免疫反応,アレルギー反応等で説明される.このうち,気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患患者数は増加しており,気管支喘息の治療法が確立した一方で,難治性喘息・重症喘息も存在し,遺伝的要因に加えて環境要因が関与する.本稿では,アレルギー領域の喘息に焦点を当てて最近の話題を概説する.結果と考察:喘息,アレルギー疾患の重症化に関与す...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in産業衛生学雑誌 Vol. 67; no. 1; pp. 1 - 8
Main Authors 佐藤, 一博, 李, 卿, 吉田, 貴彦, 角田, 正史, 伊藤, 俊弘, 日本産業衛生学会アレルギー・免疫毒性研究会, 香山, 不二雄, 西村, 泰光, 佐藤, 実, 竹下, 達也, 森本, 泰夫, 上田, 厚, 久田, 剛志, 柴田, 英治, 土橋, 邦生, 柳澤, 裕之, 菅沼, 成文, 和田, 裕雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本産業衛生学会 20.01.2025
日本産業衛生学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1341-0725
1349-533X
DOI10.1539/sangyoeisei.2024-009-A

Cover

More Information
Summary:背景:健康障害のメカニズムは,genetic and environmental interaction(GEi)の考え方によると,遺伝要因,環境要因,および両者の交互作用interactionで説明され,環境要因を同定し,その環境因子への曝露が心身に及ぼす影響は,毒性,免疫反応,アレルギー反応等で説明される.このうち,気管支喘息をはじめとするアレルギー疾患患者数は増加しており,気管支喘息の治療法が確立した一方で,難治性喘息・重症喘息も存在し,遺伝的要因に加えて環境要因が関与する.本稿では,アレルギー領域の喘息に焦点を当てて最近の話題を概説する.結果と考察:喘息,アレルギー疾患の重症化に関与する生活環境汚染因子は,ヒトが生涯を通じて曝露する環境因子の総体であるエクスポソーム(exposome)と総称・把握され,内的ドメイン,特異的外的ドメイン,一般的外的ドメインに分類され,相互に関連している.職域の曝露を含む生活環境汚染因子,さらには,近代化,都市化,グローバル化に伴う気候変動,大気汚染,マイクロプラスチック,タバコ煙,生物多様性の変化と喪失,食習慣の変化,マイクロバイオームを構成する細菌叢なども外的ドメインを構成している.現代社会においては,たくさんの新規化学物質が,その有害な健康影響についての詳細や健康影響の軽減方法についての十分な理解に使用されることが多いと考えられ,アレルギー疾患の社会的問題であると考えられる.食生活の変化もアレルギーを引き起こす重要な環境要因のひとつと考えられる.伝統的な魚を多く摂取する食習慣から西洋的な食事への転換が,アレルギー疾患の有病率の増加と関連している可能性が報告されている.気道上皮からさまざまなトリガー(多様な生活環境因子であるexposome)により放出されるサイトカインはアラーミンといわれ,thymic stromal lymphopoietin(TSLP),IL-25,IL-33などのサイトカインが知られている.抗アラーミン抗体製剤によるアレルギー疾患の治療についても,今後の展開が期待される.重症喘息に対する治療・管理においては病診連携が基本であるが,同様に,職域との産業医-臨床医連携も重要と考えられる.職域でのアレルギー対策として,環境要因への曝露回避だけでなく,喘息の発症と重症化のメカニズムに対する理解は,今後の職域におけるアレルギー・免疫毒性研究に不可欠であると考えられる.
ISSN:1341-0725
1349-533X
DOI:10.1539/sangyoeisei.2024-009-A