当院における再入院患者の傾向

【目的】当院は療養病棟、回復期病棟を持つ、101 床のリハビリテーション病院であり、近隣施設からの委嘱を受け地域医療を展開している。病院所在地域の高齢化率は37.9% と高く、地域の高齢化に伴い入退院を繰り返す患者も少なくない。今回、当院に再入院となった患者の傾向を調査し、今後の再入院に対する予防策を検討したため報告する。【方法】対象は、2020年4月1日から2021年3月31日までの期間に当院に入院した患者229 名の内、入院日から過去1 年以内に入院歴がある患者とし、計画的再入院は除外した。診療録より性別、年齢、主病名(疾患)、入院前居場所、Barthel Index(BI)、障害高齢者の...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2022; p. 50
Main Authors 大塚, 浩貴, 佐藤, 亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2022
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2022.0_50

Cover

More Information
Summary:【目的】当院は療養病棟、回復期病棟を持つ、101 床のリハビリテーション病院であり、近隣施設からの委嘱を受け地域医療を展開している。病院所在地域の高齢化率は37.9% と高く、地域の高齢化に伴い入退院を繰り返す患者も少なくない。今回、当院に再入院となった患者の傾向を調査し、今後の再入院に対する予防策を検討したため報告する。【方法】対象は、2020年4月1日から2021年3月31日までの期間に当院に入院した患者229 名の内、入院日から過去1 年以内に入院歴がある患者とし、計画的再入院は除外した。診療録より性別、年齢、主病名(疾患)、入院前居場所、Barthel Index(BI)、障害高齢者の日常生活自立度、認知症の有無、栄養補給法、嚥下障害の有無に関して後方視的に情報を収集した。【結果】対象となった再入院患者は90名(19.2%)、男性53名・女性37名、平均年齢75.0 ± 16.2 歳であった。主病名は肺炎:29 名(32.2%)、脳梗塞:12 名(13.3%)、パーキンソン病・気管支炎・圧迫骨折:各4名(4.4%)、尿路感染症・大腸憩室炎・イレウス・大腿骨頸部骨折:各3名(3.3%)、その他16 病名:25 名(27.8%)であった。入院前居場所は障害者支援施設:31 名(34.4%)、一般病院:27 名(30.0%)、自宅:18 名(20.0%)、老人福祉施設:14 名(15.6%)であった。BI は、全介助~多介助(40 点以下):70 名(77.8%)、自立(85 ~100 点):2 名(2.2%)、障害高齢者の日常生活自立度は、寝たきり:72 名(80.0%)、準寝たきり:15 名(16.7%)、自立:3 名(3.3%)であった。認知症は、あり:65 名(72.2%)、:25 名(27.8%)、栄養補給法は、経口:67 名(74.4%)、経腸:18 名(20.0%)、静脈:5 名(5.6%)、嚥下障害は、あり:54 名(60.0%)、:36 名(40.0%)であった。肺炎による入院29 名のうち施設からの入院は25 名(86.2%)であり、BI は0点:20 名(80.0%)、日常生活自立度はC2:23 名(92.0%)、認知症は22 名(88.0%)が有していた。経口摂取は14 名(56.0%)、全て嚥下障害を有していた。【考察】当院における再入院に至る主病名としては、肺炎が多い結果となった。その中でも施設からの入院がおよそ9 割を占めており、大半が、ADL 全介助の寝たきり状態であり、認知症、嚥下障害を有していた。65 歳以上の肺炎の80%は誤嚥性肺炎の疑いがあり、医療・介護関連肺炎(NHCAP)では肺炎の原因もしくは増悪因子として不顕性誤嚥を常に念頭に置く必要があると報告されている。当院の肺炎患者は、NHCAP の定義である、長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している、介護を必要とする高齢者、身障者の2 項目に該当している。また、誤嚥性肺炎のリスクが高いといわれている、歩行能力やADL が低い、認知能力の低下があるといった身体機能面の特徴とも合致している。このことから当院の再入院患者の傾向は、高齢者の重症肺炎の側面が強いことがわかる。NHCAP を契機に再入院する患者において、退院後にケアを提供する者へ情報提供を対面伝達した場合、NHCAP の予防に寄与することが報告されている。入院初期から治療やリハビリテーションに取り組み、退院前には退院先の環境を見据えた、適切な口腔ケアの方法、食事形態、食事摂取時や臥床時のポジショニング、介助方法など継続可能なケアを退院先関係者と紙面のみではなく対面にて伝達・指導することが重要であると考える。【倫理的配慮,利益相反】本研究はヘルシンキ条約に則った後方視的研究である。データの取り扱いについては個人情報保護に十分配慮し、匿名化や厳重なデータ管理を行った。
Bibliography:O-34
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2022.0_50