ポリスチレンスルホン酸ナトリウム内服下での大腸壊死術後に残存大腸の高度狭窄をきたした1例

症例は68歳,男性.慢性腎不全による高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸ナトリウムを内服中に急性心不全を発症し,弁置換術,弁形成術が施行された.術後9日目に腹痛と血便が出現した.上行結腸壊死による汎発性腹膜炎と診断し,結腸右半切除と二連銃式の人工肛門造設術を行った.術後半年後の人工肛門閉鎖の際に左側結腸に狭窄を認め,残存結腸全摘,直腸S状部切除を行った.下行結腸に著明な狭窄を伴う縦走潰瘍瘢痕を,S状結腸に潰瘍形成を認めた.病理組織検査では狭窄部,潰瘍部の腸管壁内に好塩基性結晶様異物を認め,異物反応を伴っていた.ポリスチレンスルホン酸塩が腸管壁内に取り込まれると排除困難で,慢性的な異物反応...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 73; no. 2; pp. 64 - 69
Main Authors 梅津, 哉, 田中, 花菜, 堀田, 真之介, 中野, 麻恵, 亀山, 仁史, 田島, 陽介, 島田, 能史, 小柳, 英人, 若井, 俊文, 中野, 雅人, 阿部, 馨, 佐藤, 航
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2020
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.73.64

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Summary:症例は68歳,男性.慢性腎不全による高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸ナトリウムを内服中に急性心不全を発症し,弁置換術,弁形成術が施行された.術後9日目に腹痛と血便が出現した.上行結腸壊死による汎発性腹膜炎と診断し,結腸右半切除と二連銃式の人工肛門造設術を行った.術後半年後の人工肛門閉鎖の際に左側結腸に狭窄を認め,残存結腸全摘,直腸S状部切除を行った.下行結腸に著明な狭窄を伴う縦走潰瘍瘢痕を,S状結腸に潰瘍形成を認めた.病理組織検査では狭窄部,潰瘍部の腸管壁内に好塩基性結晶様異物を認め,異物反応を伴っていた.ポリスチレンスルホン酸塩が腸管壁内に取り込まれると排除困難で,慢性的な異物反応や炎症により組織障害が遷延する可能性がある.慢性腎不全患者の腸管壊死,穿孔,腸炎に対し手術を行う際には,ポリスチレンスルホン酸塩製剤の内服歴を確認し,腸切除範囲の決定や吻合の可否に注意する必要がある.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.73.64