腫瘍免疫監視機構における細胞接着分子DNAM-1の機能

DNAM-1(CD226)は、NK細胞やT細胞などに発現する細胞表面分子で、腫瘍細胞に発現するDNAM-1リガンドを認識して接着し、キラーリンパ球に細胞傷害活性を誘導する活性化受容体である。またDNAM-1リガンドには、CD155とCD112の2つの分子があり、腫瘍細胞などに高発現している。我々はこれまでに、キラーリンパ球のDNAM-1は腫瘍細胞のDNAM-1リガンドと接着し、キラーリンパ球に腫瘍細胞傷害活性を誘導することを明らかにしてきた。しかし生体内における腫瘍免疫監視機構、つまり免疫系が体内に発生した腫瘍細胞を監視して排除し生体を守るシステムに、DNAM-1が関与する可能性については不明...

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Published inNihon Rinsho Men'eki Gakkai Sokai Shorokushu Vol. 37; p. 97
Main Authors 井口, 研子, 渋谷, 彰, 渋谷, 和子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2009
The Japan Society for Clinical Immunology
Subjects
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ISSN1880-3296
DOI10.14906/jscisho.37.0.97.0

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Summary:DNAM-1(CD226)は、NK細胞やT細胞などに発現する細胞表面分子で、腫瘍細胞に発現するDNAM-1リガンドを認識して接着し、キラーリンパ球に細胞傷害活性を誘導する活性化受容体である。またDNAM-1リガンドには、CD155とCD112の2つの分子があり、腫瘍細胞などに高発現している。我々はこれまでに、キラーリンパ球のDNAM-1は腫瘍細胞のDNAM-1リガンドと接着し、キラーリンパ球に腫瘍細胞傷害活性を誘導することを明らかにしてきた。しかし生体内における腫瘍免疫監視機構、つまり免疫系が体内に発生した腫瘍細胞を監視して排除し生体を守るシステムに、DNAM-1が関与する可能性については不明であった。 我々はDNAM-1遺伝子欠損マウスを作製し、発癌モデルを用い、DNAM-1の腫瘍免疫監視機構における機能について解析した。化学発癌物質メチルコラントレンやDMBAを投与し発癌を誘導した結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスは野生型マウスと比較して線維肉腫や乳頭腫の発癌率が高かった。このことより、DNAM-1は発癌に対する免疫監視機構において重要な機能を持ち、発癌を抑制することが明らかになった。 これまでに腫瘍免疫監視機構に関与する細胞表面分子はTRAILしか報告がなく、DNAM-1は腫瘍免疫監視機構において非常に重要な分子であると言える。DNAM-1の腫瘍免疫療法への応用などが期待できる。
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ISSN:1880-3296
DOI:10.14906/jscisho.37.0.97.0