病棟看護師と病棟薬剤師の薬剤管理と連携に関する調査研究
病棟で薬剤管理を共に担う看護師と薬剤師の連携・協働の課題を明らかにし,促進を図るために,病棟での連携の現状,情報共有の内容,薬剤の管理・取り扱いの状況などについて病棟看護師,病棟薬剤師に質問紙調査を実施した.A大学の附属病院で病棟薬剤師が在駐している病棟の看護師(1病院)および1年以上病棟業務をしている病棟薬剤師(4病院)を対象とした.質問項目は基本情報や情報共有の現状と活用,薬剤に関する業務内容に関して全22項目とし,2段階または5段階のスコアの選択肢,あるいは複数項目からの選択形式とした.看護師271名(回収率58.5%),薬剤師87名(回収率87.0%)から回答を得た.看護師と薬剤師が「...
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Published in | 昭和学士会雑誌 Vol. 80; no. 2; pp. 155 - 168 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
2020
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2187-719X 2188-529X |
DOI | 10.14930/jshowaunivsoc.80.155 |
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Summary: | 病棟で薬剤管理を共に担う看護師と薬剤師の連携・協働の課題を明らかにし,促進を図るために,病棟での連携の現状,情報共有の内容,薬剤の管理・取り扱いの状況などについて病棟看護師,病棟薬剤師に質問紙調査を実施した.A大学の附属病院で病棟薬剤師が在駐している病棟の看護師(1病院)および1年以上病棟業務をしている病棟薬剤師(4病院)を対象とした.質問項目は基本情報や情報共有の現状と活用,薬剤に関する業務内容に関して全22項目とし,2段階または5段階のスコアの選択肢,あるいは複数項目からの選択形式とした.看護師271名(回収率58.5%),薬剤師87名(回収率87.0%)から回答を得た.看護師と薬剤師が「日常的に」または「必要に応じて」連携を取れていると回答した看護師はそれぞれ30.6%,51.7%に対し,薬剤師は72.4%,21.8%であった.一方,情報共有を十分と感じる看護師は19.2%,薬剤師は11.5%であった.情報共有は,看護師,薬剤師共に対面で行うことが最も多く,「常に」あるいは「必要に応じて」薬剤管理指導記録を活用する看護師は41.7%であった.看護師が薬剤師から得たい情報は「薬物療法」,「持参薬の申し送り」,「処方」,「薬剤師の指導内容」に関することが多く,薬剤師が看護師から得たい情報は「服薬状況」,「患者の病状」,「薬物療法」,「患者の家族」に関することが多かった.日常的に連携が取れている看護師は,「薬物療法」,「処方」,「薬剤師の指導内容」,「病棟の医薬品」に関する情報共有,日常的に連携が取れている薬剤師は,「持参薬の申し送り」,「患者の家族」,「服薬状況」に関する情報共有を行うことが有意に多かった.日常的に連携が取れている薬剤師では,「持参薬の確認」「内服薬の服薬指導・説明」,「内服薬投与後の副作用の確認」,「投与している点滴の患者への説明」,「内容の確認」「点滴投与中の観察」「点滴投与後の観察」などの業務をより高い頻度で実施していた.以上より,看護師・薬剤師共に半数以上が「日常的に」または「必要に応じて」連携をとれていると回答していたが,情報共有は十分と感じている看護師や薬剤師は少なく,その要因として看護師が求める「薬物療法」や「服薬指導」などに関する情報,薬剤師が望む「患者の状態」や「患者の家族」に関する情報の共有不足とともに,薬剤管理指導記録の活用が不十分であることが示唆された.日常的に連携の取れている看護師や薬剤師は,上記に関連する情報共有を積極的に行い,連携の取れている薬剤師はベッドサイドで患者に直接関わる観察や説明を高い頻度で行っていた.看護師と薬剤師が互いのニーズを理解して,今回抽出された情報共有の方法と内容,薬剤や患者に関わる業務を工夫することでより望ましい連携と質の高い医療に提供ができるものと思われる. |
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ISSN: | 2187-719X 2188-529X |
DOI: | 10.14930/jshowaunivsoc.80.155 |