筋炎関連抗体と間質性肺疾患

多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)などの炎症性筋疾患は間質性肺疾患(ILD)を合併することが多く,一言にILDといってもその病型はさまざまであり,治療方針や予後に大きく関連する.また近年,筋炎関連自己抗体の種類により臨床経過が異なることが分かってきた.抗ARS抗体はアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体であり,筋炎,発熱,多関節炎,間質性肺炎,Raynaud現象,機械工の手といった抗ARS抗体症候群と呼ばれる臨床症状を呈する.HRCT所見・病理所見としては,非特異性間質性肺炎パターンが多いが,一部に浸潤影を合併するものもある.現在,抗ARS抗体は8種類同定されており,その種類により表現型...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 83; no. 3; pp. 190 - 197
Main Authors 若林, 邦伸, 西見, 慎一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2023
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.83.190

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Summary:多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)などの炎症性筋疾患は間質性肺疾患(ILD)を合併することが多く,一言にILDといってもその病型はさまざまであり,治療方針や予後に大きく関連する.また近年,筋炎関連自己抗体の種類により臨床経過が異なることが分かってきた.抗ARS抗体はアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体であり,筋炎,発熱,多関節炎,間質性肺炎,Raynaud現象,機械工の手といった抗ARS抗体症候群と呼ばれる臨床症状を呈する.HRCT所見・病理所見としては,非特異性間質性肺炎パターンが多いが,一部に浸潤影を合併するものもある.現在,抗ARS抗体は8種類同定されており,その種類により表現型が異なることが分かってきた.抗MDA5抗体はMDA5と呼ばれる感染防御に関与している蛋白を対応抗原とする自己抗体であり,本抗体陽性例では,筋症状は乏しいが,画像上,びまん性肺胞傷害パターンをとる数日から数週間の経過で呼吸不全に至る急速進行性ILDを高頻度に合併する.2020年にPM/DMに合併するILDに関して,日本呼吸器学会と日本リウマチ学会の共同で作成された「膠原病に伴う間質性肺疾患の診断・治療指針」において,治療アルゴリズム(案)が提案された.特に抗MDA5抗体陽性例では,ステロイドパルス療法を含む高用量PSLに,カルシニューリン阻害薬,シクロホスファミド間欠大量静注療法を初期より用いる3剤併用療法が推奨された.近年,これら3剤併用療法でも効果不十分の症例には血漿交換療法など新たな治療法も行われるようになってきた.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.83.190