Hirschsprung病腸管の神経節細胞の局在についての免疫組織化学的検討

ヒルシュスプルング病(以下HD)は消化管の粘膜下神経叢(Meissner神経叢)と筋層間神経叢(Auerbach神経叢)の神経節細胞の先天的欠如が原因で機能的腸閉塞をきたす疾患である.今日行われているHD根治術は肛門から連続する病変部を切除し,正常腸管と肛門を吻合する方法である.術中には正常と思われる腸管組織を迅速診断に提出し,神経節細胞の数や有無を確認して切除範囲を決定する.しかし正常部の神経節細胞の数や術中迅速診断の方法は規定されておらず,切除範囲を決定する基準がないのが現状である.今回,効率的な術中迅速診断をするために必要となるHD腸管の神経節細胞の局在や吻合部の細胞数を明らかにすべく,...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 82; no. 4; pp. 285 - 295
Main Authors 福永, 奈津, 本間, まゆみ, 根本, 哲生, 亀山, 香織, 矢持, 淑子, 佐々木, 陽介, 渡井, 有
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2022
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.82.285

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Summary:ヒルシュスプルング病(以下HD)は消化管の粘膜下神経叢(Meissner神経叢)と筋層間神経叢(Auerbach神経叢)の神経節細胞の先天的欠如が原因で機能的腸閉塞をきたす疾患である.今日行われているHD根治術は肛門から連続する病変部を切除し,正常腸管と肛門を吻合する方法である.術中には正常と思われる腸管組織を迅速診断に提出し,神経節細胞の数や有無を確認して切除範囲を決定する.しかし正常部の神経節細胞の数や術中迅速診断の方法は規定されておらず,切除範囲を決定する基準がないのが現状である.今回,効率的な術中迅速診断をするために必要となるHD腸管の神経節細胞の局在や吻合部の細胞数を明らかにすべく,病理組織学的に検討した.対象は昭和大学病院および昭和大学横浜市北部病院小児外科で手術を行ったHD症例9例である.切除腸管の全割標本を作製し,Hu C/Dの免疫染色を用いて神経節細胞数や分布を検討した.自験例では生後2-4か月のHD患者の吻合部腸管のMeissnerとAuerbach神経節細胞数はそれぞれ93.77±20.9個/cm,110.3±23.0個/cmであった.無神経節腸管が10mm以下の2例では神経節細胞は全周性に同じ高さから分布していたが,無神経節腸管が33mm以上であった5例は腸間膜側よりも対側でより肛門側まで神経節細胞が認められる傾向にあった.また腸間膜対側で神経節細胞が100個/cm以上認められても腸管膜側では神経節細胞が見られない症例が3例見られ,そのうち1例は口側断端の腸間膜側約30%が無神経節腸管であった.術中迅速診断では腸間膜側と対側の複数か所の組織をし,神経節細胞の分布に不均一性がなく,Auerbach神経節細胞数が100個/cm以上ある腸管を正常腸管とみなすことで過不足なく病変部を切除することができると考える.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.82.285