MAIR-I を分子標的とした敗血症に対する治療法の可能性

我々は近年自然免疫系を担当する細胞に発現する新たなレセプター分子群、MAIR (myeloid associated Ig like receptors, CD300)を同定した。MAIR分子群は9つの遺伝子から成り、その細胞外領域は互いに高度に保存されているが細胞内領域により活性化と抑制性のレセプターに分けられる。このうちMAIR-Iはマクロファージ、肥満細胞、好中球、樹状細胞に発現し細胞内領域のITIM(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)配列を介して抑制性シグナルを伝達するレセプターであることを明らかにしている。更に我々はMAIR...

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Published inNihon Rinsho Men'eki Gakkai Sokai Shorokushu Vol. 37; p. 42
Main Author 小田, ちぐさ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2009
The Japan Society for Clinical Immunology
Subjects
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ISSN1880-3296
DOI10.14906/jscisho.37.0.42.0

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Summary:我々は近年自然免疫系を担当する細胞に発現する新たなレセプター分子群、MAIR (myeloid associated Ig like receptors, CD300)を同定した。MAIR分子群は9つの遺伝子から成り、その細胞外領域は互いに高度に保存されているが細胞内領域により活性化と抑制性のレセプターに分けられる。このうちMAIR-Iはマクロファージ、肥満細胞、好中球、樹状細胞に発現し細胞内領域のITIM(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)配列を介して抑制性シグナルを伝達するレセプターであることを明らかにしている。更に我々はMAIR-I遺伝子欠損マウスを作製し、盲腸を結紮穿孔し腹膜炎を起こすことによる (Cecum Ligation and Puncture model, CLP) 敗血症を誘導したところ、野生型マウスに比較して生存率が亢進した。また、MAIR-I遺伝子欠損マウスではCLPの際の腹腔の好中球の浸潤や細菌の排除が亢進しており、一方で、肥満細胞でのMCP1、MIP1a、IL-13の産生も亢進していた。肥満細胞の移入及びマクロファージと好中球を欠損させることにより、肥満細胞上のMAIR-Iの欠損によるケモカインやサイトカインの産生亢進が好中球の浸潤や細菌排除の亢進につながり、ひいては生存率の改善に寄与していることを明らかとした。更に野生型マウスに抗MAIR-I及びコントロール抗体を投与してCLPから敗血症を誘導したところ、抗MAIR-I抗体を投与したマウスにおいて生存率が改善した。これらのことからMAIR-Iは自然免疫応答を介して炎症反応を制御している可能性が示唆され、更に未だ死亡率が高い敗血症性腹膜炎におけるMAIR-Iを介した新たな治療の可能性を示した。
Bibliography:W3-5
ISSN:1880-3296
DOI:10.14906/jscisho.37.0.42.0