ボツリヌストキシン注射 小林武夫グループの16年 (1989-2004)

「1. はじめに」痙攣性発声障害は, 発話中の声のつまりやとぎれを特徴とする原因不明の疾患である1~21). 痙攣性発声障害の治療として我々は1989年からボツリヌストキシン甲状披裂筋内注入術を行い, 良好な治療成績を得てきた22~35). 2004年1月までの約15年間の患者総数は260症例, 注射回数は1486回である. ここにそれらの症例をまとめ, 解析を行ったので報告する. 「2. Botulinum Toxinとは?」Clostridium botulinum, Botulinum Toxin, Botulism Clostridium botulinum(ボツリヌス菌)はグラム陰性...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in喉頭 Vol. 16; no. 2; pp. 67 - 73
Main Authors 熊田, 政信, 小林, 武夫, 村野, 恵美, 中西, 由佳, 石毛, 美代子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本喉頭科学会 2004
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-6127
2185-4696
DOI10.5426/larynx1989.16.2_67

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」痙攣性発声障害は, 発話中の声のつまりやとぎれを特徴とする原因不明の疾患である1~21). 痙攣性発声障害の治療として我々は1989年からボツリヌストキシン甲状披裂筋内注入術を行い, 良好な治療成績を得てきた22~35). 2004年1月までの約15年間の患者総数は260症例, 注射回数は1486回である. ここにそれらの症例をまとめ, 解析を行ったので報告する. 「2. Botulinum Toxinとは?」Clostridium botulinum, Botulinum Toxin, Botulism Clostridium botulinum(ボツリヌス菌)はグラム陰性嫌気性桿菌であり, 土壌中に芽胞として常在する. 漬け物, 缶詰め, 真空パック等, 嫌気性の環境下にて増殖し, 外毒素としてBotulinum Toxin(BT)を産生する. BTにはアセチルコリン(Ach)遊離阻害作用があり, 骨格筋の麻痺や自律神経症状を主症状とする重篤な食中毒(Botulism(ボツリヌス中毒))を引き起こすが, これは特に呼吸筋の麻痺等により致命的になりうる. BTの作用機序BTの作用機序は, シナプス小胞放出阻害によるAch遊離阻害である. 神経筋接合部・自律神経節・神経節後副交感神経末端といったAchを伝達物質とする部位に作用する.
ISSN:0915-6127
2185-4696
DOI:10.5426/larynx1989.16.2_67