小腸癌の術前診断が可能であったLynch症候群の1例

症例は60歳台の女性.2年前に閉塞性直腸癌の診断にて,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.20年前に子宮体癌の手術歴があり,遺伝子検査を施行し,Lynch症候群の診断が確定した.術後サーベイランスの経過中に慢性貧血を認め,上下部消化管内視鏡検査とCT検査を行うも,貧血の原因となる粗大病変は認めなかった.Lynch症候群の存在があったため,小腸腫瘍を積極的に疑い経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行った.空腸にType2病変を認め,生検にて,中分化管状腺癌を確認した.原発性小腸癌の診断にて,腹腔鏡補助下小腸部分切除を施行し,術後経過良好で第11病日に退院となった.小腸癌は術前診断に至ることが難しい疾...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 77; no. 1; pp. 30 - 36
Main Authors 北川, 隆洋, 後藤, 圭佑, 柳, 舜仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2024
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.77.30

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Summary:症例は60歳台の女性.2年前に閉塞性直腸癌の診断にて,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.20年前に子宮体癌の手術歴があり,遺伝子検査を施行し,Lynch症候群の診断が確定した.術後サーベイランスの経過中に慢性貧血を認め,上下部消化管内視鏡検査とCT検査を行うも,貧血の原因となる粗大病変は認めなかった.Lynch症候群の存在があったため,小腸腫瘍を積極的に疑い経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行った.空腸にType2病変を認め,生検にて,中分化管状腺癌を確認した.原発性小腸癌の診断にて,腹腔鏡補助下小腸部分切除を施行し,術後経過良好で第11病日に退院となった.小腸癌は術前診断に至ることが難しい疾患であるが,本症例ではLynch症候群が背景にあることから積極的に小腸癌を疑い,経口ダブルバルーン小腸内視鏡を用いることで,術前確定診断を得ることができた.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.77.30