Er:YAGレーザーによる最小侵襲の歯肉審美治療

Er:YAGレーザーの発振波長2,940 nmは水への吸収性が非常に高く,軟組織,硬組織ともに効率良く蒸散できる.歯肉への切開においてEr:YAGレーザーは,他のレーザー波長と比べて周囲組織への熱の影響も注水・非注水下ともに極めて少ないことが報告されている.これは,歯科臨床において歯肉切除術,小帯切除術,また歯肉色素沈着除去やメタルタトゥー除去などに効率的に用いられ,創傷治癒が良好で,また疼痛が少ないことと一致している.現在,歯科臨床において使用されているEr:YAGレーザーの特徴として,様々な部位にアプローチできる細いコンタクトチップが応用されていることが挙げられる.チップ先端と同軸の注水が...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 46; no. 1; pp. 21 - 28
Main Authors 青木, 章, 水谷, 幸嗣, 三上, 理沙子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 15.04.2025
日本レーザー医学会
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ISSN0288-6200
1881-1639
DOI10.2530/jslsm.jslsm-46_0001

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Summary:Er:YAGレーザーの発振波長2,940 nmは水への吸収性が非常に高く,軟組織,硬組織ともに効率良く蒸散できる.歯肉への切開においてEr:YAGレーザーは,他のレーザー波長と比べて周囲組織への熱の影響も注水・非注水下ともに極めて少ないことが報告されている.これは,歯科臨床において歯肉切除術,小帯切除術,また歯肉色素沈着除去やメタルタトゥー除去などに効率的に用いられ,創傷治癒が良好で,また疼痛が少ないことと一致している.現在,歯科臨床において使用されているEr:YAGレーザーの特徴として,様々な部位にアプローチできる細いコンタクトチップが応用されていることが挙げられる.チップ先端と同軸の注水が正確になされ,硬組織と軟組織の両者に繊細な処置が可能である.この特徴は,手術用顕微鏡との治療に非常に相性が良い.処置部位を限局的にし,正確に組織蒸散を熱傷害なく実現できるこの組み合わせは,近年のMinimally invasive(MI)のコンセプトに合致する診療アプローチと考えられる.このコンビネーションの最適な例として,歯肉の審美障害であるメラニン色素およびメタルタトゥーの除去が挙げられる.メラニン色素除去においては,歯肉着色の原因となっているメラノサイトを含んだ上皮層を取り除き,新しい上皮が形成されることで改善される.そのため,最小侵襲で色調改善を図る際には,顕微鏡での拡大視野下でレーザーの繊細な組織蒸散を表層の上皮とメラノサイトが凝集しやすい上皮脚部分に選択的に行うことが望ましい.それにより,結合組織中の毛細血管や神経が損傷をせず,出血が少なく術後疼痛の少ない処置にできる.また,メタルタトゥー除去では,結合組織に埋入した金属切削片を,Er:YAGレーザーのコンタクトチップを用いた注水下での組織蒸散により,正確かつ低侵襲に除去でき,痛みが少なく,再発しにくい治療が可能となり,患者の満足度が高い臨床成績が得られている.本稿では近年に発表した最小侵襲の新しい術式であるEr:YAG laser micro-keyhole surgery(EL-MIKS)による広範囲のメタルタトゥー除去について概説をする.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.jslsm-46_0001