鈍的腎外傷の保存療法中に出現した腎動静脈瘻に対し動脈塞栓が奏効した1例

症例は81歳女性で,道路を横断中,軽トラックに左側から衝突され救急搬送となった。肉眼的血尿と左側腹部痛の訴えがあり,造影CTにて左腎中極の深在性腎損傷を呈す本邦腎外傷分類Ⅲb型の腎外傷と診断し入院とした。保存的に加療し,状態は安定していたが,受傷18日目に突然の肉眼的血尿が出現した。貧血の進行のため赤血球輸血を要した。受傷側の腎動脈造影を行なったところ動静脈瘻と仮性動脈瘤をみとめたため,液体塞栓物質とマイクロコイルにて経カテーテル的動脈塞栓術 (以下TAE: transcatheter arterial embolism) を施行した。術後は血尿の再発や貧血の進行を認めず,経過良好であったが,...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 61; no. 2; pp. 118 - 123
Main Authors 佐藤, 友紀, 川崎, 芳英, 加藤, 愼之介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 31.07.2012
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.61.118

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Summary:症例は81歳女性で,道路を横断中,軽トラックに左側から衝突され救急搬送となった。肉眼的血尿と左側腹部痛の訴えがあり,造影CTにて左腎中極の深在性腎損傷を呈す本邦腎外傷分類Ⅲb型の腎外傷と診断し入院とした。保存的に加療し,状態は安定していたが,受傷18日目に突然の肉眼的血尿が出現した。貧血の進行のため赤血球輸血を要した。受傷側の腎動脈造影を行なったところ動静脈瘻と仮性動脈瘤をみとめたため,液体塞栓物質とマイクロコイルにて経カテーテル的動脈塞栓術 (以下TAE: transcatheter arterial embolism) を施行した。術後は血尿の再発や貧血の進行を認めず,経過良好であったが,心不全を併発し長期の内科的治療を要した。受傷14か月後の時点で動静脈瘻の再発や腎梗塞の出現,腎機能低下も認めずTAEは有効であった。腎動静脈瘻に循環器疾患が併発することが文献からも報告されており,長期的な患者管理を行なう上で重要となる合併症である。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.61.118