塩化ビニルモノマーの使用開始後50年後に発症した肝血管肉腫の1例
症例は73歳, 男性. 塩化ビニルモノマーの曝露歴あり. 2000年1月当院循環器内科に, 心嚢液貯留を主訴として入院. 腹部エコー, CT, MRIで肝臓にびまん性に小結節陰影を認めたため, 2月に当科に転科. エコー下肝生検にて肝血管肉腫と診断された. 腫瘍の拡がりから手術適応は無く, 経口抗癌剤のみで外来経過観察した. 6月に播種性血管内凝固症候群となり再入院. 消化管出血により同年7月に死亡した. 本症例では1950年から1964年までの14年間塩化ビニルモノマーを扱っていたという職歴があり, 他の誘因を認めない事より, 塩化ビニルモノマーが関与しているものと考えられた. 塩化ビニルモ...
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Published in | 肝臓 Vol. 44; no. 8; pp. 407 - 414 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2003
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.44.407 |
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Summary: | 症例は73歳, 男性. 塩化ビニルモノマーの曝露歴あり. 2000年1月当院循環器内科に, 心嚢液貯留を主訴として入院. 腹部エコー, CT, MRIで肝臓にびまん性に小結節陰影を認めたため, 2月に当科に転科. エコー下肝生検にて肝血管肉腫と診断された. 腫瘍の拡がりから手術適応は無く, 経口抗癌剤のみで外来経過観察した. 6月に播種性血管内凝固症候群となり再入院. 消化管出血により同年7月に死亡した. 本症例では1950年から1964年までの14年間塩化ビニルモノマーを扱っていたという職歴があり, 他の誘因を認めない事より, 塩化ビニルモノマーが関与しているものと考えられた. 塩化ビニルモノマーによる肝血管肉腫の発症は初回曝露より平均約20年と報告されている. 本症例は初回曝露より50年後にびまん性に発症した稀な肝血管肉腫であり, 今後過去の塩化ビニルモノマー使用者の定期健診の必要性においても示唆に富む症例と考えた. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.44.407 |