競技スポーツにおける身体的エンハンスメントに関する倫理学的研究:より「よい」身体をめぐって

「I. 本研究の背景」近年, 医科学技術の進歩が目覚ましい. 生命科学や分子生物学の進展は, 生物学的次元における人間の身体機能をも解明し得た. それと併行し, 医療技術も急速に進展している. とくに, ヒトゲノム計画(Human Genome Project)によって, ヒトのゲノムの全塩基配列の解読が完了されたこともあり, 遺伝子技術を用いた治療, いわゆる遺伝子治療が確立されてきている. このような医療技術の急速な進歩は, 人類の幸福に寄与するという恩恵がある反面, 治療を施す対象が人格たる人間であることもあり, さまざまな倫理的, 社会的問題を引き起こしかねない. その懸念の1つが,...

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Published in体育学研究 Vol. 59; no. 1; pp. 53 - 66
Main Author 竹村, 瑞穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本体育学会 2014
日本体育学会
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ISSN0484-6710
1881-7718
DOI10.5432/jjpehss.13050

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Summary:「I. 本研究の背景」近年, 医科学技術の進歩が目覚ましい. 生命科学や分子生物学の進展は, 生物学的次元における人間の身体機能をも解明し得た. それと併行し, 医療技術も急速に進展している. とくに, ヒトゲノム計画(Human Genome Project)によって, ヒトのゲノムの全塩基配列の解読が完了されたこともあり, 遺伝子技術を用いた治療, いわゆる遺伝子治療が確立されてきている. このような医療技術の急速な進歩は, 人類の幸福に寄与するという恩恵がある反面, 治療を施す対象が人格たる人間であることもあり, さまざまな倫理的, 社会的問題を引き起こしかねない. その懸念の1つが, 医療技術が治療目的だけではなく, 身体能力や精神の向上, 増強にも利用され, 人間そのものが非治療的な操作の対象に据えられてしまうというエンハンスメントの問題である. 一例として, 競技スポーツにおけるドーピング問題が挙げられよう.
ISSN:0484-6710
1881-7718
DOI:10.5432/jjpehss.13050