音声外科のすべて―過去から未来へ 喉頭の再生医療

再生医療は20世紀後半のブレークスルーであり, 21世紀における発展が期待されている. 喉頭領域においても枠組み, 筋肉, 粘膜, 反回神経などの再生研究が活発に行われており, 一部は既に臨床応用に至っている. 再生医療は細胞を用いることで失われた組織を造る, あるいは失われた機能を復活させることを目的とし, 細胞およびその調節因子, さらに細胞が活動できる土台の3要素を駆使することで組織再生を図るものである. 声帯の硬化性病変である瘢痕や萎縮に対しては, 種々の幹細胞や細胞増殖因子を用いた再生実験が進んでいるが, 中でも塩基性線維芽細胞増殖因子と肝細胞増殖因子が有望視されており, いずれも臨...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 119; no. 3; pp. 163 - 167
Main Author 平野, 滋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.03.2016
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.119.163

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Summary:再生医療は20世紀後半のブレークスルーであり, 21世紀における発展が期待されている. 喉頭領域においても枠組み, 筋肉, 粘膜, 反回神経などの再生研究が活発に行われており, 一部は既に臨床応用に至っている. 再生医療は細胞を用いることで失われた組織を造る, あるいは失われた機能を復活させることを目的とし, 細胞およびその調節因子, さらに細胞が活動できる土台の3要素を駆使することで組織再生を図るものである. 声帯の硬化性病変である瘢痕や萎縮に対しては, 種々の幹細胞や細胞増殖因子を用いた再生実験が進んでいるが, 中でも塩基性線維芽細胞増殖因子と肝細胞増殖因子が有望視されており, いずれも臨床応用に至っている. 枠組みの再生には人工の足場材料の開発が, 反回神経においては各種ポリマーを用いた神経再生誘導チューブの開発が進められているが, 最近の脱細胞技術の発展により, さらに大きな組織, 例えば喉頭全体の再生用足場材料についても研究が開始されている. これらの研究が進むことで喉頭全摘後の喉頭再生も夢ではなくなることが期待される.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.119.163