外来診療の工夫 将来に向けて―嚥下障害 外来と往診・訪問診療について~嚥下診療15年の実践から

耳鼻科開業医の外来において嚥下診療は憂鬱である. その理由はいくつかある. 1) 面倒である, 捉えにくい, 2) 検査評価に時間がかかる (一般診療時間中に行うのは無理), 3) 兵頭スコアと重症度の関連が解らない, 4) 喉頭ファイバーと嚥下内視鏡の違いは? など, 容易に診療に踏み出せないことにぶちあたる. そこで, 一般外来診療で嚥下評価に負担をかけない方法として, 1) 一度にせず2回に分ける, 2) 嚥下障害を少しでも疑う場合, 再診してもらう, 3) 初診時最低限の所見を取る, 4) 患者・家族の嚥下の要望を把握しておく, などの工夫をしている. 誤嚥性肺炎が急増する中, 著者は...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 2; pp. 110 - 118
Main Author 浜井, 行夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.02.2018
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.121.110

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Summary:耳鼻科開業医の外来において嚥下診療は憂鬱である. その理由はいくつかある. 1) 面倒である, 捉えにくい, 2) 検査評価に時間がかかる (一般診療時間中に行うのは無理), 3) 兵頭スコアと重症度の関連が解らない, 4) 喉頭ファイバーと嚥下内視鏡の違いは? など, 容易に診療に踏み出せないことにぶちあたる. そこで, 一般外来診療で嚥下評価に負担をかけない方法として, 1) 一度にせず2回に分ける, 2) 嚥下障害を少しでも疑う場合, 再診してもらう, 3) 初診時最低限の所見を取る, 4) 患者・家族の嚥下の要望を把握しておく, などの工夫をしている. 誤嚥性肺炎が急増する中, 著者は15年前, 耳鼻科外来において嚥下診療の必要性を痛感し, 当時, 臨床的評価である藤島グレード (表1)6) を頼りに, 摂食時ムセル・ムセナイで暗中模索の嚥下診療を繰り返していた. その後, 10年前からは津田豪太先生の嚥下内視鏡の観察ポイント1) を評価方法の基軸として診療した. しかし, 評価に時間がかかり一般外来が停止するので, 嚥下障害が疑われる患者は, 初診時は簡易的に摂食方法と嚥下体操を指示して帰宅してもらい, 改めて別の日の午後の診療前に再診後, 嚥下評価していた. さらに7年前から4項目にまとめられた兵頭スコア (表2) の提唱により外来の工夫が一変した. 初診時はスコアの①②項目, 再診時③④項目に分けて評価スコアを作成した. また, 西山耕一郎先生考案の「兵頭スコアと食形態の嚥下食ピラミッド」(図1)2) を使って各患者の要望に応じた嚥下治療・指導につなげている. 耳鼻科開業医の将来に向けての工夫として, 著者は15年前から嚥下外来と並行して, 在宅患者の耳鼻科領域の疾患 (嚥下, 気管カニューレ管理, 耳漏, 鼻出血など) に注目し, 在宅主治医からの依頼に応じて在宅への往診・訪問診療を行っている. 厚労省の推進する多科・多職種による在宅医療の地域包括ケアシステムを念頭において, 広島県地方部会・広島県耳鼻科医会は2015年10月在宅医療検討委員会を発足させ, 在宅主治医の要望のアンケート結果に鑑み, 一般耳鼻科開業医を対象として定期的に嚥下障害に関する症例検討会を開催している.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.121.110