胃内視鏡検査における交叉感染予防

内視鏡検査前の血液検査でHBV, HCV, HIVおよび梅毒のいずれに対しても感染のないことが確認された上部消化管内視鏡検査の被検者77名を対象として, 検査前後の被検者の咽頭での一般細菌培養と検査直後および消毒直後の内視鏡鉗子口および外套における一般細菌とHelicobacter pylori (以下H.pylori) の培養をおこなった.内視鏡機器の消毒にはポピドンヨード, 70%消毒用アルコール, 1%塩化ベンザルコニウムを用いて手洗いでおこない, 全行程の所要時間は10分以内であった.咽頭からの検出菌はα-溶連菌, 表皮ブドウ球菌, 大腸菌, 黄色ブドウ球菌, 肺炎桿菌, 腸球菌, カ...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 73; no. 10; pp. 1019 - 1024
Main Authors 宇和川, 匡, 栗原, 英明, 桜井, 磐, 岡部, 紀正, 辻原, 佳人, 松本, 孝嗣, 高橋, 孝行, 松本, 文夫, 宮本, 栄, 山崎, 洋次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.10.1999
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.73.1019

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Summary:内視鏡検査前の血液検査でHBV, HCV, HIVおよび梅毒のいずれに対しても感染のないことが確認された上部消化管内視鏡検査の被検者77名を対象として, 検査前後の被検者の咽頭での一般細菌培養と検査直後および消毒直後の内視鏡鉗子口および外套における一般細菌とHelicobacter pylori (以下H.pylori) の培養をおこなった.内視鏡機器の消毒にはポピドンヨード, 70%消毒用アルコール, 1%塩化ベンザルコニウムを用いて手洗いでおこない, 全行程の所要時間は10分以内であった.咽頭からの検出菌はα-溶連菌, 表皮ブドウ球菌, 大腸菌, 黄色ブドウ球菌, 肺炎桿菌, 腸球菌, カンジダ, 緑膿菌, MethicillinresistantStaphylococcus aureus (以下MRSA) で常在菌以外の菌も検出された.咽頭からの検出菌の内視鏡への付着状況をみるとカンジダ, 肺炎桿菌, 表皮ブドウ球菌では高率に検査後の内視鏡に付着し, 黄色ブドウ球菌, 大腸菌, α-溶連菌も付着した.また, 全被検者において胃前庭部の定点から採取した胃粘膜組織を培養してH.pyloriの検索をおこなったところ77例中23例にH.pylori陽性例がおり, そのH.pylori陽性者23例のうち15例 (652%) に, 検査後の内視鏡鉗子口および外套からもH.pyloriが分離された.検査後の内視鏡鉗子口あるいは外套に付着した一般細菌, H.pyloriは前述の方法で消毒を行ったところ全て陰性化し, 内視鏡を介する被検者間の交叉感染は当施設の簡便な消毒, 洗浄方法により予防可能と考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.73.1019