Vibrio vulnificus感染症に関する臨床細菌学的検討

肝硬変を伴う患者の血液および左上肢の病変からV. vulnificusを分離し, その細菌学的性状ならびに臨床的背景について検討したので, 得られた知見について報告する. 分離されたグラム陰性菌はV. vulnificusと同定され, Hollisらの成績と一致した.検出菌の薬剤感受性については, ペニシリン感受性を示し, セファロスポリンとアミノグリコシド系には比較的感受性を示した.検出菌の発育至適温度域は3%NaCl加ペプトン水を用いると, 24℃ から41℃ の範囲にあり, 最も増殖性のよかったのは, 37℃ であった. 患者は発熱と下痢を主訴として入院し, 干魚を摂取後24時間内に敗血...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 56; no. 11; pp. 1032 - 1037
Main Authors 片桐, 文子, 前川, 和彦, 大谷, 英樹, 高宮, 春男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.11.1982
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.56.1032

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Summary:肝硬変を伴う患者の血液および左上肢の病変からV. vulnificusを分離し, その細菌学的性状ならびに臨床的背景について検討したので, 得られた知見について報告する. 分離されたグラム陰性菌はV. vulnificusと同定され, Hollisらの成績と一致した.検出菌の薬剤感受性については, ペニシリン感受性を示し, セファロスポリンとアミノグリコシド系には比較的感受性を示した.検出菌の発育至適温度域は3%NaCl加ペプトン水を用いると, 24℃ から41℃ の範囲にあり, 最も増殖性のよかったのは, 37℃ であった. 患者は発熱と下痢を主訴として入院し, 干魚を摂取後24時間内に敗血症が出現した.本症は海水にさらした後の傷口の感染は認められなかった.入院時の検査所見より, DICと敗血症が確認され, 入院7日後に死亡した. 近年, V. cholerae, V. parahaemolyticus, V. alginolyticus, V. fluvialis, V. vulnificus, V. metschnihoviiのビブリオ属のうち前3者については, すでに詳細に報告されているが, 他の3菌種に関する報告は本邦ではなお散見されるに過ぎない.しかしながら, 生鮮魚, 貝類を嗜好する日本人にとって, これらの菌種により感染する機会も少なくないと考えられる.今回, 私共は肝硬変を伴い, 急激に皮膚の紅斑性壊死と上肢筋肉に激痛を訴えた症例において, 手部生検組織および血液より, V. vulnificusを検出し, その細菌学的性状ならびに臨床的背景について検討したので報告する.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.56.1032