石灰化を伴った多房性胸腺嚢胞の一例

症例は29歳,女性.左前胸部の違和感を主訴に当院を受診し胸部CT検査で前縦隔腫瘍を指摘された.画像上,腫瘍壁の一部に石灰化を認め,内部は不均一に造影され,周囲組織への浸潤は認めなかった.奇形腫を疑い胸腔鏡下前縦隔腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は胸腺左葉に連続しており大きさは42×22×15mmであった.腫瘍壁は硬く肥厚し,内部は多房性で淡黄色の垢様角化物で充満していた.病理学的には,嚢胞壁の内腔は角化した重層扁平上皮や円柱上皮で被覆されており,三胚葉に分化した組織はいずれも認めなかった.以上より多房性胸腺嚢胞と診断したが,胸腺嚢胞で多房性を呈するものは稀であり,炎症反応を背景に発生する.悪性腫瘍や...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 686 - 690
Main Authors 手塚, 則明, 寺本, 晃冶, 花岡, 淳, 堀, 哲雄, 川口, 庸, 北村, 将司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2010
Subjects
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.24.686

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Summary:症例は29歳,女性.左前胸部の違和感を主訴に当院を受診し胸部CT検査で前縦隔腫瘍を指摘された.画像上,腫瘍壁の一部に石灰化を認め,内部は不均一に造影され,周囲組織への浸潤は認めなかった.奇形腫を疑い胸腔鏡下前縦隔腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は胸腺左葉に連続しており大きさは42×22×15mmであった.腫瘍壁は硬く肥厚し,内部は多房性で淡黄色の垢様角化物で充満していた.病理学的には,嚢胞壁の内腔は角化した重層扁平上皮や円柱上皮で被覆されており,三胚葉に分化した組織はいずれも認めなかった.以上より多房性胸腺嚢胞と診断したが,胸腺嚢胞で多房性を呈するものは稀であり,炎症反応を背景に発生する.悪性腫瘍や自己免疫疾患の合併症も報告されているが,本症例では併存疾患は認められなかった.石灰化を伴い内腔が垢様角化物で充満した特異な形態を呈した症例であるので報告する.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.24.686