シス桂皮酸の植物生長調節作用 —植物の方向認識を阻害する研究
多くの植物には, 地中に向かって根を伸ばす重力屈性と, 光に向かって地上部を伸ばす屈光性が知られている. 植物組織が一定方向に伸長する作用を屈曲と呼ぶ. 近年, シス桂皮酸はアグロケミカルシーズとしてピックアップされ, 300種類を超える誘導体に対する重力屈性阻害を指標としたスクリーニングから有望な化合物が報告された. 本稿ではシス桂皮酸とオーキシンの関わりを中心に紹介する. 屈曲に関する研究の歴史は長い. 古くは1880年にダーウィンがクサヨシの幼葉鞘への部分的な光照射によって屈曲が制御されることを見出している. 1928年にはマカラスムギの幼葉鞘の先端を切断し, その切断面に物質を投与して...
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Published in | 日本農薬学会誌 Vol. 45; no. 1; pp. 11 - 12 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農薬学会
20.02.2020
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ISSN | 2187-0365 2187-8692 |
DOI | 10.1584/jpestics.W20-14 |
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Summary: | 多くの植物には, 地中に向かって根を伸ばす重力屈性と, 光に向かって地上部を伸ばす屈光性が知られている. 植物組織が一定方向に伸長する作用を屈曲と呼ぶ. 近年, シス桂皮酸はアグロケミカルシーズとしてピックアップされ, 300種類を超える誘導体に対する重力屈性阻害を指標としたスクリーニングから有望な化合物が報告された. 本稿ではシス桂皮酸とオーキシンの関わりを中心に紹介する. 屈曲に関する研究の歴史は長い. 古くは1880年にダーウィンがクサヨシの幼葉鞘への部分的な光照射によって屈曲が制御されることを見出している. 1928年にはマカラスムギの幼葉鞘の先端を切断し, その切断面に物質を投与して生じる屈曲から生長促進活性を判断する手法(アベナテスト)が考案され, 陽性を示す物質群がオーキシンと名づけられた. 代表的なオーキシンはインドール-3-酢酸(IAA)である. 屈光性については幼葉鞘の影側でオーキシンが生産されるためと理解されているが, 重力屈性については現在も研究が進められている. |
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ISSN: | 2187-0365 2187-8692 |
DOI: | 10.1584/jpestics.W20-14 |