電荷ゆらぎ分子動力学法による高分子電解質のナノ構造形成

高分子電解質の特性はナノスケールの高次構造に大きく依存するため,所望の特性を発揮する高分子電解質を分子設計するためには,分子間力と自己組織化によるナノ構造形成のメカニズムを結びつけることが重要な課題である. 本研究では,高分子・溶媒・溶質の間に強い相互作用が存在する系について,静電相互作用を精度良く扱うために,charge equilibration(QEq)法に基づく動的な電荷決定法を採用し,高分子電解質に適用できるようパラメーターの最適化を実施した.最適化にあたっては,電場の影響を考慮するとともに,最適化アルゴリズムとして simplex 法を採用することにより,双極子モーメントと分極率の...

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Published in高分子論文集 Vol. 67; no. 1; pp. 28 - 38
Main Authors 茂本, 勇, 川上, 智教
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2010
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ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.67.28

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Summary:高分子電解質の特性はナノスケールの高次構造に大きく依存するため,所望の特性を発揮する高分子電解質を分子設計するためには,分子間力と自己組織化によるナノ構造形成のメカニズムを結びつけることが重要な課題である. 本研究では,高分子・溶媒・溶質の間に強い相互作用が存在する系について,静電相互作用を精度良く扱うために,charge equilibration(QEq)法に基づく動的な電荷決定法を採用し,高分子電解質に適用できるようパラメーターの最適化を実施した.最適化にあたっては,電場の影響を考慮するとともに,最適化アルゴリズムとして simplex 法を採用することにより,双極子モーメントと分極率の計算精度をともに向上させた.さらに,電荷再配置の計算効率を向上させるため,電荷を自由度とする電荷ゆらぎ MD 法を定式化した. これらのパラメーターと方法論を用いて高分子電解質 Nafion®を対象に電荷ゆらぎ MD シミュレーションを実行し,小角 X 線散乱から予想されるクラスター・チャネル構造への自発的構造形成には静電相互作用の精密な計算が重要であることを明らかにした.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.67.28