3 房総半島南部のヤマビル個体群の発生動態について(第59回日本衛生動物学会東日本支部大会講演要旨)

房総半島南部に位置する清澄山系を中心とした房総丘陵の東部一帯では, 1970年代からヤマビルの生息域拡大にともなう吸血被害の増加という衛生動物問題が存在し, 住民生活の大きな支障となっている. この地域におけるヤマビル個体群の発生動態と被害の実態を知るために1990年より生態学的な調査を開始し, 分布調査により生息域の変動を観察するとともに, 常時5~7ヶ所の調査定点を設定して生息密度の変動を観察してきた. ヤマビルの生息を直接確認する分布調査から, 房総丘陵の生息域は調査開始以来一貫して拡大し続け, 1980年代末に行われた調査の結果と比較して, 20年間で面積は約2倍に拡大したことが確認さ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 59; no. 2; p. 104
Main Author 藤曲, 正登
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 2008
Online AccessGet full text
ISSN0424-7086
2185-5609
DOI10.7601/mez.59.104_1

Cover

More Information
Summary:房総半島南部に位置する清澄山系を中心とした房総丘陵の東部一帯では, 1970年代からヤマビルの生息域拡大にともなう吸血被害の増加という衛生動物問題が存在し, 住民生活の大きな支障となっている. この地域におけるヤマビル個体群の発生動態と被害の実態を知るために1990年より生態学的な調査を開始し, 分布調査により生息域の変動を観察するとともに, 常時5~7ヶ所の調査定点を設定して生息密度の変動を観察してきた. ヤマビルの生息を直接確認する分布調査から, 房総丘陵の生息域は調査開始以来一貫して拡大し続け, 1980年代末に行われた調査の結果と比較して, 20年間で面積は約2倍に拡大したことが確認された. 生息密度の調査は1992年から毎月下旬に1回行い, 1定点について1m×1m方形枠内の出現数を5ヶ所観察して平均値を求め, 1年間(12回)の合計数から各定点の生息密度の年次変動を解析した. 生息密度(1平方メートルあたりの出現数)は2006年までの15年間に増加のピークが3回認められ, この地域のヤマビル個体群には6~8年を周期とした生息密度の変動が観察された. 2005~2007年は調査開始以来3度目の上昇期にあり, この間に生息密度の低い地域の出現数が増加して高密度の生息地に変わる過程と, 周辺地域への生息域の拡大が観察された. ヤマビル個体群の年次変動の要因としては気象条件や宿主動物の動向など, 複数の要因が考えられた.
ISSN:0424-7086
2185-5609
DOI:10.7601/mez.59.104_1