音楽認知の観点からみた自閉スペクトラム症における非定型的音声言語情報処理

自閉スペクトラム症(ASD)の人々は,言語情報・パラ言語情報の処理障害を呈することが,多くの研究により示されている.しかし,ASD 者における音声言語情報処理障害の原因については未解明の点が多い.一見すると大きく異なる言語音と音楽は,その音響的特徴に多くの共通性がある.そこで,本稿では,ASD 者の音楽認知についての先行研究をもとに,ASD における音声言語情報処理障害の原因を議論した.先行研究の多くは,ASD 者が,定型発達者よりも優れたピッチ知覚能力を有することを示唆している.また,ASD 者のメロディ知覚にも非定型性は認められていない.その一方で,ピッチ・メロディ知覚と同じく,音の基本周...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本社会福祉マネジメント学会誌 Vol. 1; no. 1; pp. 21 - 28
Main Author 土居, 裕和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本社会福祉マネジメント学会 2021
Online AccessGet full text
ISSN2436-4061
DOI10.50965/jasmjournal.1.1_21

Cover

More Information
Summary:自閉スペクトラム症(ASD)の人々は,言語情報・パラ言語情報の処理障害を呈することが,多くの研究により示されている.しかし,ASD 者における音声言語情報処理障害の原因については未解明の点が多い.一見すると大きく異なる言語音と音楽は,その音響的特徴に多くの共通性がある.そこで,本稿では,ASD 者の音楽認知についての先行研究をもとに,ASD における音声言語情報処理障害の原因を議論した.先行研究の多くは,ASD 者が,定型発達者よりも優れたピッチ知覚能力を有することを示唆している.また,ASD 者のメロディ知覚にも非定型性は認められていない.その一方で,ピッチ・メロディ知覚と同じく,音の基本周波数情報を利用する韻律情報処理においては,定型発達者よりも低い成績を示すことが少なくない.音楽認知と音声言語情報処理にみられるこのような乖離は,ASD における音声言語情報処理障害が,言語音特有の音響的特徴に起因する可能性を示唆している.
ISSN:2436-4061
DOI:10.50965/jasmjournal.1.1_21