慢性膵炎診療の進歩

慢性膵炎は生活習慣病的要素を備えた疾患であり,2010年に「慢性膵炎の断酒・生活指導指針」(厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班)が示された.2011年にリパーゼ力価の高いパンクレリパーゼ製剤が薬価収載され,2012年に内視鏡的膵管ステント留置術が,2013年に体外衝撃波膵石破砕術が保険収載される等,膵石治療や膵内外分泌機能不全の管理は進歩してきた.慢性膵炎は,多くが非可逆性であるため,より早期の診断と治療介入が望まれてきたが,膵線維化や膵石,膵内外分泌機能不全といった進行した病理像や臨床像に基づいて定義・診断されてきたため,その早期の臨床像は明らかで...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 110; no. 3; pp. 629 - 635
Main Authors 正宗, 淳, 菊田, 和宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.03.2021
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.110.629

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Summary:慢性膵炎は生活習慣病的要素を備えた疾患であり,2010年に「慢性膵炎の断酒・生活指導指針」(厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班)が示された.2011年にリパーゼ力価の高いパンクレリパーゼ製剤が薬価収載され,2012年に内視鏡的膵管ステント留置術が,2013年に体外衝撃波膵石破砕術が保険収載される等,膵石治療や膵内外分泌機能不全の管理は進歩してきた.慢性膵炎は,多くが非可逆性であるため,より早期の診断と治療介入が望まれてきたが,膵線維化や膵石,膵内外分泌機能不全といった進行した病理像や臨床像に基づいて定義・診断されてきたため,その早期の臨床像は明らかでなかった.近年,mechanistic definitionという新しい定義が提案され,慢性膵炎を新たに捉え直す機運が高まっている.日本では,2009年に世界に先駆けて早期慢性膵炎の概念が取り入れられ,2019年には診断特異度の向上を念頭に診断基準が改訂された.慢性膵炎診療のさらなる質の向上が期待される.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.110.629