十二指腸・空腸憩室に伴う落下腸石によりイレウスをきたした1例

症例は87歳,女性.嘔吐と腹痛を主訴に,前医で保存的治療を行うも改善なく,当院へ紹介された.諸検査の結果,腸管内異物もしくは小腸腫瘍によるイレウスと診断し,緊急開腹手術を施行した.腸管の癒着や壊死は認めず,腸石嵌頓による小腸イレウスであった.上部空腸の腸間膜側に憩室を2つ認め,一方は虚脱していたが,もう一方は同様の腸石を有していた.胆道系に異常はなく,腸石は空腸憩室内から落下したものと思われた.腸石はいずれも摘出し,空腸憩室は侵襲性を考え非切除とした.術後に施行した上部消化管造影検査で,十二指腸水平脚にも憩室を2つ認め,イレウスをきたした腸石は十二指腸憩室から落下した可能性も考えられた.十二指...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 5; pp. 1185 - 1189
Main Authors 開發, 展之, 大西, 一久, 谷田, 信行, 浜口, 伸正, 古北, 由仁, 藤島, 則明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.71.1185

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Summary:症例は87歳,女性.嘔吐と腹痛を主訴に,前医で保存的治療を行うも改善なく,当院へ紹介された.諸検査の結果,腸管内異物もしくは小腸腫瘍によるイレウスと診断し,緊急開腹手術を施行した.腸管の癒着や壊死は認めず,腸石嵌頓による小腸イレウスであった.上部空腸の腸間膜側に憩室を2つ認め,一方は虚脱していたが,もう一方は同様の腸石を有していた.胆道系に異常はなく,腸石は空腸憩室内から落下したものと思われた.腸石はいずれも摘出し,空腸憩室は侵襲性を考え非切除とした.術後に施行した上部消化管造影検査で,十二指腸水平脚にも憩室を2つ認め,イレウスをきたした腸石は十二指腸憩室から落下した可能性も考えられた.十二指腸・空腸憩室に伴う落下腸石による腸閉塞は非常に稀であるが,イレウスの原因として鑑別に挙げる必要性があり,個々の症例に応じた治療法を選択する必要があると思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.1185