左腎動脈断裂により大量血胸を来した鈍的左横隔膜破裂の1例

症例は30歳,男性.左側胸部の鈍的外傷で救急搬送された.胸腹部CTで外傷性多発肋骨骨折と血気胸に加え,遊離腹腔内ガス像と横行結腸の胸腔への脱出が認められた.胸腔ドレーン挿入後から大量の血液流出を認め,ショック状態となったため,緊急手術を施行した.開胸所見は,胸壁から少量の出血と横隔膜損傷部からの横行結腸の胸腔内脱出を認めるのみであった.そこで,止血処置と横隔膜の可及的修復の後に閉胸した.続いて開腹すると,大量の血液流出と共にショック状態に陥った.左腎動脈断裂が判明し,左腎摘出および左腎動脈断端の縫合閉鎖を行った.また横行結腸と下行結腸に虚血性変化を認め,一部切除の上結腸瘻を作成して閉腹した.術...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 34; no. 7; pp. 688 - 692
Main Authors 松原, 慧, 吉川, 武志, 川名, 伸一, 三竿, 貴彦, 青江, 基
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.11.2020
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.34.688

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Summary:症例は30歳,男性.左側胸部の鈍的外傷で救急搬送された.胸腹部CTで外傷性多発肋骨骨折と血気胸に加え,遊離腹腔内ガス像と横行結腸の胸腔への脱出が認められた.胸腔ドレーン挿入後から大量の血液流出を認め,ショック状態となったため,緊急手術を施行した.開胸所見は,胸壁から少量の出血と横隔膜損傷部からの横行結腸の胸腔内脱出を認めるのみであった.そこで,止血処置と横隔膜の可及的修復の後に閉胸した.続いて開腹すると,大量の血液流出と共にショック状態に陥った.左腎動脈断裂が判明し,左腎摘出および左腎動脈断端の縫合閉鎖を行った.また横行結腸と下行結腸に虚血性変化を認め,一部切除の上結腸瘻を作成して閉腹した.術後経過は良好であった.腎動脈断裂を合併した外傷性横隔膜損傷は非常に稀である.鈍的横隔膜損傷では腹部臓器損傷を伴うことが多く,その出血が胸腔内に流れ込む可能性を考慮した治療戦略を立てる必要がある.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.34.688