皮膚色素沈着,多彩な免疫異常を呈し,短期間で進行した自己免疫性肝炎/原発性胆汁性肝硬変overlap症候群の1男性例

症例は53歳男性.5年前に総ビリルビン3.3 mg/dl ,ALT 724 IU/l ,ALP 568 IU/l の肝機能異常を認めた.HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,血清IgG正常,IgM高値,抗核抗体陰性を示した.抗ミトコンドリア抗体は20倍と陽性を示さなかったが,生化学的所見より原発性胆汁性肝硬変を疑われた.自己判断で以後は医療機関を受診していなかったが,5年後に皮膚色素沈着,腹水,黄疸を来し,紹介受診となった.5年前に正常範囲であった血清IgGは著明に高値となり,陰性であった抗核抗体が2560×以上と陽転化していた.IgMはさらに高値となり,抗ミトコンドリア抗体M2分画が93.5と強陽...

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Published in肝臓 Vol. 51; no. 9; pp. 513 - 520
Main Authors 道免, 和文, 下田, 慎治, 春野, 政虎, 相島, 慎一, 田中, 博文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2010
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.51.513

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Summary:症例は53歳男性.5年前に総ビリルビン3.3 mg/dl ,ALT 724 IU/l ,ALP 568 IU/l の肝機能異常を認めた.HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,血清IgG正常,IgM高値,抗核抗体陰性を示した.抗ミトコンドリア抗体は20倍と陽性を示さなかったが,生化学的所見より原発性胆汁性肝硬変を疑われた.自己判断で以後は医療機関を受診していなかったが,5年後に皮膚色素沈着,腹水,黄疸を来し,紹介受診となった.5年前に正常範囲であった血清IgGは著明に高値となり,陰性であった抗核抗体が2560×以上と陽転化していた.IgMはさらに高値となり,抗ミトコンドリア抗体M2分画が93.5と強陽性であった.またLKM-1抗体,dsDNA抗体,PA-IgG,直接・間接Coombs試験も陽性であった.肝組織所見は完成した硬変像であり,血清学的所見より自己免疫性肝炎/原発性胆汁性肝硬変overlap症候群からの進展と診断した.発症から短期間での各種抗体,生化学的検査成績,臨床症状の自然経過を観察し得た貴重な自己免疫性肝炎/原発性胆汁性肝硬変overlap症候群の1男性症例であった.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.51.513