鼠径ヘルニア術中の経ヘルニア嚢的腹腔鏡で診断された大網裂孔ヘルニアの1例

症例は左片麻痺と認知症のある81歳の男性.心窩部痛と嘔吐にて救急来院し,手拳大の左鼠径ヘルニア嵌頓を認めた.腹部骨盤CTにてヘルニア内容はS状結腸であり,同時に部分的な小腸のイレウス像と腸間膜脂肪織の上昇を認めた.鼠径ヘルニア嵌頓に関連した小腸イレウスと判断し,緊急で全身麻酔下に左鼠径ヘルニア根治術を施行した.ヘルニア内容のS状結腸に虚血壊死はみられず,局所観察では腹腔内に明らかな異常所見を認めなかったため,鼠径部ヘルニア門から診査腹腔鏡を施行した.腹腔鏡観察にて,大網を貫通して絞扼された小腸が観察され,大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断した.小開腹にて大網の絞扼を解除した.腸切除は不...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 70; no. 5; pp. 1516 - 1519
Main Authors 松本, 松圭, 林, 忍, 清水, 正幸, 長島, 敦, 江川, 智久, 関根, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2009
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.70.1516

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Summary:症例は左片麻痺と認知症のある81歳の男性.心窩部痛と嘔吐にて救急来院し,手拳大の左鼠径ヘルニア嵌頓を認めた.腹部骨盤CTにてヘルニア内容はS状結腸であり,同時に部分的な小腸のイレウス像と腸間膜脂肪織の上昇を認めた.鼠径ヘルニア嵌頓に関連した小腸イレウスと判断し,緊急で全身麻酔下に左鼠径ヘルニア根治術を施行した.ヘルニア内容のS状結腸に虚血壊死はみられず,局所観察では腹腔内に明らかな異常所見を認めなかったため,鼠径部ヘルニア門から診査腹腔鏡を施行した.腹腔鏡観察にて,大網を貫通して絞扼された小腸が観察され,大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断した.小開腹にて大網の絞扼を解除した.腸切除は不要であったため,鼠径ヘルニアはmesh plugにて修復した.術後経過は良好で,術後6日目に軽快退院した.鼠径ヘルニア嵌頓を合併した小腸イレウスの確定診断に,鼠径部のヘルニア門からの診査腹腔鏡は有用であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.70.1516