線維腺腫の経過観察中に脳転移による神経症状にて発見された浸潤性乳癌の1例

症例は52歳,女性.2010年7月にふらつき,失認,頭痛を契機に前医を受診し,頭部CTにて右後頭葉に石灰化を伴う6cm大の腫瘤および大脳半球,小脳の多発病変を指摘された.転移性脳腫瘍疑いにて当院脳神経外科紹介受診となり,原発巣の検索目的に上部・下部内視鏡検査,胸腹部造影CTを施行した.内視鏡検査では異常を認めず,CTにて右乳房に粗大石灰化を伴う6cm大の乳房腫瘤と右鎖骨上,右腋窩および上縦隔のリンパ節腫大を認めた.問診ではこの右乳房腫瘤は32年前より前医にて経過観察中で,MMG,USでは陳旧性の線維腺腫としても矛盾しない所見であった.しかし,右後頭葉転移性脳腫瘍に対して摘出術を施行したところ,...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 9; pp. 2225 - 2231
Main Authors 堀口, 慎一郎, 山下, 年成, 黒井, 克昌, 有賀, 智之, 鈴木, 繁紀, 川上, 睦美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.2225

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Summary:症例は52歳,女性.2010年7月にふらつき,失認,頭痛を契機に前医を受診し,頭部CTにて右後頭葉に石灰化を伴う6cm大の腫瘤および大脳半球,小脳の多発病変を指摘された.転移性脳腫瘍疑いにて当院脳神経外科紹介受診となり,原発巣の検索目的に上部・下部内視鏡検査,胸腹部造影CTを施行した.内視鏡検査では異常を認めず,CTにて右乳房に粗大石灰化を伴う6cm大の乳房腫瘤と右鎖骨上,右腋窩および上縦隔のリンパ節腫大を認めた.問診ではこの右乳房腫瘤は32年前より前医にて経過観察中で,MMG,USでは陳旧性の線維腺腫としても矛盾しない所見であった.しかし,右後頭葉転移性脳腫瘍に対して摘出術を施行したところ,石灰化を伴う低分化腺癌と診断されたため,乳腺腫瘤に対して針生検を行い浸潤性乳管癌と診断された.このため,乳腺腫瘍切除術を行い,最終的に線維腺腫内から発生した原発性乳癌で,原発巣,脳転移巣のいずれもER-,PR-,HER2 3+,GCDFP15陽性であることから,右原発性乳癌の脳転移と診断した.陳旧性の線維腺腫に発生した浸潤性乳癌が遠隔転移から発見された症例はこれまでに報告されていない.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.2225