乳頭癌から転化した甲状腺未分化癌術後に,分化癌として肺転移再発を来した1例

症例は88歳女性.5年前に甲状腺乳頭癌から転化した未分化癌に対し甲状腺全摘と放射線療法を施行し,外来で経過観察していた (pT4aN0M0 stageⅣA).FDG-PETで右中葉S4に増大傾向を示す7.7 mm大の結節影を認め,原発性肺癌または甲状腺癌の肺転移が疑われた.病変の局在から術前の組織採取は困難であり診断を兼ねた加療目的に完全胸腔鏡下右中葉切除を施行した.最終病理診断結果は甲状腺乳頭癌の肺転移で,未分化癌の成分は認められなかった.甲状腺未分化癌は全甲状腺癌の1~2%と頻度は少ないが極めて予後不良の悪性腫瘍である.乳頭癌など分化癌からの未分化転化は原発巣のみならずリンパ節転移巣や遠隔...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 35; no. 2; pp. 176 - 181
Main Authors 調枝, 治樹, 氏家, 裕征, 松原, 慧, 片岡, 和彦, 木村, 宣彦, 渡邉, 元嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.03.2021
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.35.176

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Summary:症例は88歳女性.5年前に甲状腺乳頭癌から転化した未分化癌に対し甲状腺全摘と放射線療法を施行し,外来で経過観察していた (pT4aN0M0 stageⅣA).FDG-PETで右中葉S4に増大傾向を示す7.7 mm大の結節影を認め,原発性肺癌または甲状腺癌の肺転移が疑われた.病変の局在から術前の組織採取は困難であり診断を兼ねた加療目的に完全胸腔鏡下右中葉切除を施行した.最終病理診断結果は甲状腺乳頭癌の肺転移で,未分化癌の成分は認められなかった.甲状腺未分化癌は全甲状腺癌の1~2%と頻度は少ないが極めて予後不良の悪性腫瘍である.乳頭癌など分化癌からの未分化転化は原発巣のみならずリンパ節転移巣や遠隔転移巣でも発生するとされている.今回我々は,未分化癌の長期生存例で,原発巣が未分化転化していたにも関わらず転移巣では転化前の組織型を示すという,腫瘍学的に興味深い経過を辿った症例を経験したので報告する.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.35.176