看護者が不妊症患者と関わる中で感じる困難や葛藤

目 的 本研究の目的は,看護者が不妊症患者の看護を実践する中でどのような困難や葛藤を感じているのか,その具体的な事象を明らかにすることである。 対象と方法 研究デザインは質的記述的研究であり,対象者は生殖補助医療を実施している施設に勤務する12名の看護者である。半構成的面接法により,対象者に不妊症患者の看護を実践する中で感じている困難や葛藤と,その時の思いを語ってもらった。データから具体的な困難・葛藤事象は何かを視点として分析し,類似する内容をまとめカテゴリー化した。 結 果 困難や葛藤は3つに大別された。(1)「不妊症患者の特性を理解したケアが実践できない」では,看護者は壁を作っている患者と...

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Published in日本助産学会誌 Vol. 20; no. 1; pp. 1_69 - 1_78
Main Author 渡邊, 知佳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本助産学会 2006
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ISSN0917-6357
1882-4307
DOI10.3418/jjam.20.1_69

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Summary:目 的 本研究の目的は,看護者が不妊症患者の看護を実践する中でどのような困難や葛藤を感じているのか,その具体的な事象を明らかにすることである。 対象と方法 研究デザインは質的記述的研究であり,対象者は生殖補助医療を実施している施設に勤務する12名の看護者である。半構成的面接法により,対象者に不妊症患者の看護を実践する中で感じている困難や葛藤と,その時の思いを語ってもらった。データから具体的な困難・葛藤事象は何かを視点として分析し,類似する内容をまとめカテゴリー化した。 結 果 困難や葛藤は3つに大別された。(1)「不妊症患者の特性を理解したケアが実践できない」では,看護者は壁を作っている患者との対人関係の構築や,患者の悩みに返答できないことに困難を感じていた。(2)「期待に反する治療結果場面でアプローチができない」では,看護者は患者の体験に巻き込まれ,悲しみや無力感を感じ,さらに患者から逃げている状況がみられた。(3)「治療の選択に踏み込むことができない」では,看護者には患者の自己決定権を侵害できない,医師の治療方針に口は挟めないという認識があり,治療の選択に関してほとんど介入できていなかった。 結 論 困難・葛藤事象は,看護者が患者をステレオタイプで捉え,患者看護者間で援助的な関係が築かれていないことに起因していた。看護者は個々の患者に関心を向け患者をありのまま受けとめること,それにより両者の間で自己の思いを表現できる関係を築くことが重要と考えられた。
ISSN:0917-6357
1882-4307
DOI:10.3418/jjam.20.1_69