衝突癌を含む同一肺葉内同時性多発肺癌の一例

症例は80歳代,女性.2年前に左上肺野の結節影を指摘され経過観察されていたが増大傾向にあり,当科紹介となった.胸部CT検査で左肺上葉に26 mm大の結節影と5 mm大のスリガラス陰影を認めた.左上葉肺癌疑いで左肺上葉切除術を施行した.切除標本の病理学的検討から肺結節病変は乳頭型腺癌と淡明細胞腺癌との衝突癌,スリガラス陰影病変は細気管支肺胞上皮癌と診断され,同一肺葉内に存在する同時性多発肺癌と考えられた.経時的にCT画像を後方視すると,二つの結節影が増大傾向を示す過程で衝突する様子が確認できた.三ヵ所の病変についてEGFR遺伝子変異の検索を行うと,全て同一のExon19欠失変異であった.衝突癌を...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 30; no. 7; pp. 882 - 887
Main Authors 上田, 桂子, 大内, 政嗣, 尾崎, 良智, 井上, 修平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2016
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.30.882

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Summary:症例は80歳代,女性.2年前に左上肺野の結節影を指摘され経過観察されていたが増大傾向にあり,当科紹介となった.胸部CT検査で左肺上葉に26 mm大の結節影と5 mm大のスリガラス陰影を認めた.左上葉肺癌疑いで左肺上葉切除術を施行した.切除標本の病理学的検討から肺結節病変は乳頭型腺癌と淡明細胞腺癌との衝突癌,スリガラス陰影病変は細気管支肺胞上皮癌と診断され,同一肺葉内に存在する同時性多発肺癌と考えられた.経時的にCT画像を後方視すると,二つの結節影が増大傾向を示す過程で衝突する様子が確認できた.三ヵ所の病変についてEGFR遺伝子変異の検索を行うと,全て同一のExon19欠失変異であった.衝突癌を含む多発肺癌の報告は少なく,本症例は同一のEGFR遺伝子変異パターンを示しながら,異なる分化傾向を示した興味深い症例と考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.30.882