大腿滑膜肉腫肺転移切除術後の肺転移再発に対し胸骨正中切開下に残存肺全摘除を施行した1例

症例は33歳女性.22歳時に左大腿滑膜肉腫に対し,広範囲切除および術後化学療法が施行された.術後3年目に肺転移で再発した.腫瘍は右肺下葉に存在し,右中間肺動脈幹内へ進展していたため,胸腔鏡補助下に右肺中下葉切除を施行した.肺切除術後8年目に右残存肺の肺門部に結節影が出現した.結節影は次第に増大し,右主肺動脈内にまで進展したことから肺転移を疑った.他の部位に転移を認めず手術の方針となった.手術は胸骨正中切開下に心囊内で右肺動静脈を切離し,同視野で右主気管支を切断した.その後,右残存肺と胸壁の癒着剥離を行い,右残存肺全摘除を施行した.癒着剥離時に,大循環経由と推察する血流により次第に肺が緊満し,さ...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 31; no. 6; pp. 753 - 757
Main Authors 安川, 元章, 川口, 剛史, 櫛部, 圭司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2017
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.31.753

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Summary:症例は33歳女性.22歳時に左大腿滑膜肉腫に対し,広範囲切除および術後化学療法が施行された.術後3年目に肺転移で再発した.腫瘍は右肺下葉に存在し,右中間肺動脈幹内へ進展していたため,胸腔鏡補助下に右肺中下葉切除を施行した.肺切除術後8年目に右残存肺の肺門部に結節影が出現した.結節影は次第に増大し,右主肺動脈内にまで進展したことから肺転移を疑った.他の部位に転移を認めず手術の方針となった.手術は胸骨正中切開下に心囊内で右肺動静脈を切離し,同視野で右主気管支を切断した.その後,右残存肺と胸壁の癒着剥離を行い,右残存肺全摘除を施行した.癒着剥離時に,大循環経由と推察する血流により次第に肺が緊満し,さらに癒着剥離面からの大量出血を来したため,剥離操作に難渋した.本例のように心囊内で肺動静脈を切離可能であっても,胸壁との癒着が高度で剥離に難渋が予測される場合は,流出肺静脈処理を最後にすべきと考える.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.31.753