左肺上葉切除後に肺静脈断端血栓と脊髄梗塞を発症した一例

肺葉切除後の肺静脈断端血栓は,重要臓器に血栓性塞栓を来たす可能性がある.一方で脊椎や大血管手術以外の周術期合併症としての脊髄梗塞はほとんど知られていない.今回我々は,左上葉肺癌に対して左上葉切除術を施行し,術後3日目に脊髄梗塞を発症し,同時に肺静脈断端血栓が発見された症例を報告する.症例は65歳男性,左上葉肺癌に対する左上葉切除の術後3日目に突然の両下肢運動麻痺と感覚障害を発症した.脊髄MRIでTh2/3右後角にT2高信号域が認められ脊髄梗塞と診断された.また造影CTで肺静脈断端血栓を認め,抗凝固療法が開始された.脊髄梗塞に対しては発症直後よりリハビリテーションを開始し症状の改善を認めた.術後...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 33; no. 5; pp. 544 - 548
Main Authors 松平, 秀樹, 尾高, 真, 翁, 真希, 森, 彰平, 大塚, 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.07.2019
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.33.544

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Summary:肺葉切除後の肺静脈断端血栓は,重要臓器に血栓性塞栓を来たす可能性がある.一方で脊椎や大血管手術以外の周術期合併症としての脊髄梗塞はほとんど知られていない.今回我々は,左上葉肺癌に対して左上葉切除術を施行し,術後3日目に脊髄梗塞を発症し,同時に肺静脈断端血栓が発見された症例を報告する.症例は65歳男性,左上葉肺癌に対する左上葉切除の術後3日目に突然の両下肢運動麻痺と感覚障害を発症した.脊髄MRIでTh2/3右後角にT2高信号域が認められ脊髄梗塞と診断された.また造影CTで肺静脈断端血栓を認め,抗凝固療法が開始された.脊髄梗塞に対しては発症直後よりリハビリテーションを開始し症状の改善を認めた.術後5ヵ月の外来受診時には,運動麻痺は消失し,歩行や自動車の運転も可能となっていた.肺静脈内血栓の存在と脊髄梗塞の発症経過からは,肺静脈断端血栓が脊髄梗塞の原因となった可能性が高いと考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.33.544