糖尿病剖検症例における感染症の実態

糖尿病患者における感染症の予後の変遷を知る目的で, 川崎市立川崎病院における糖尿病剖検例を調査し, その感染症の実態について検討した.対象は1970~1984年までの15年間に当院で剖検し得た糖尿病症例116例 (男性67例, 女性49例) である.剖検時に何らかの感染症がみられた72例を感染群, 残り44例を非感染群とした.感染症の変貌については1970~1974年までの11例 (A群), 1975~1979年までの26例 (B群), 1980~1984年までの79例 (C群) の3群に分けて検討した. 感染群72例中111件の感染症が存在していたが, 剖検前に発見されていたのは71件 (6...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 62; no. 3; pp. 187 - 193
Main Authors 松岡, 康夫, 福田, 純也, 藤森, 一平, 小花, 光夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.03.1988
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.62.187

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Summary:糖尿病患者における感染症の予後の変遷を知る目的で, 川崎市立川崎病院における糖尿病剖検例を調査し, その感染症の実態について検討した.対象は1970~1984年までの15年間に当院で剖検し得た糖尿病症例116例 (男性67例, 女性49例) である.剖検時に何らかの感染症がみられた72例を感染群, 残り44例を非感染群とした.感染症の変貌については1970~1974年までの11例 (A群), 1975~1979年までの26例 (B群), 1980~1984年までの79例 (C群) の3群に分けて検討した. 感染群72例中111件の感染症が存在していたが, 剖検前に発見されていたのは71件 (64.0%) のみで, 残りの40件 (36.0%) は剖検で初めて発見された.腎孟腎炎が最も多く, 気管支肺炎が次いでいた.敗血症は10件 (9.0%) とかなり高率であった.起炎菌としては腎孟腎炎ではE.coli, 気管支肺炎ではP.aeruginosaが最多であった.感染死は14例 (12.1%) であり, 直接死因の第2位を占めていた.感染死の割合を年代別にみるとA群18.2%, B群11.5%, C群11.4%であった.糖尿病の治療, コントロール状況, 罹病期間を感染群, 非感染群で比較したところ5年以上のものが感染群に多かったが, その他には差がなかった. 化学療法の発展は糖尿病患者における感染症の予後にも変貌を与えている.しかし, 今回の剖検例の検討では感染死の割合は思いのほか減少しておらず, しかも感染症が必ずしも的確に診断されていなかった.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.62.187