子宮内膜の脈管構造と免疫寛容に携わる脱落膜化子宮内膜間質細胞の転写制御機構の解明

子宮内膜の脱落膜化は,胚着床と妊娠の維持に必須の過程である.脱落膜化の障害は不育症,流産,および妊娠高血圧腎症などの周産期疾患をもたらす.排卵後の黄体から分泌されるプロゲステロン(P)によって,子宮内膜間質細胞は形態学的および機能的に分化する.子宮内膜間質細胞におけるHeart and neural crest derivatives-expressed transcript 2 (HAND2)はP受容体に直接制御される転写制御因子群の一つである.HAND2活性の促進が,子宮内膜間質細胞における血管新生因子やサイトカインの産生・分泌を制御する.間質細胞はこれらの因子を介して,血管内皮細胞や免疫...

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Published in関西医科大学雑誌 Vol. 72; pp. 11 - 16
Main Authors 田中, 進, 村田, 紘未, 岡田, 英孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 関西医科大学医学会 2021
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ISSN0022-8400
2185-3851
DOI10.5361/jkmu.72.11

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Summary:子宮内膜の脱落膜化は,胚着床と妊娠の維持に必須の過程である.脱落膜化の障害は不育症,流産,および妊娠高血圧腎症などの周産期疾患をもたらす.排卵後の黄体から分泌されるプロゲステロン(P)によって,子宮内膜間質細胞は形態学的および機能的に分化する.子宮内膜間質細胞におけるHeart and neural crest derivatives-expressed transcript 2 (HAND2)はP受容体に直接制御される転写制御因子群の一つである.HAND2活性の促進が,子宮内膜間質細胞における血管新生因子やサイトカインの産生・分泌を制御する.間質細胞はこれらの因子を介して,血管内皮細胞や免疫細胞と相互作用することで血管構築および免疫寛容の成立に寄与する.我々は子宮内膜間質細胞におけるHAND2が,fibroblast growth factor (FGF) 9-FGF受容体シグナル伝達を抑制することによりangiopoietin 2 (ANGPT2)産生を減少させ,分泌期子宮内膜における血管構造に寄与している可能性を報告した.さらに,HAND2がIL15遺伝子発現を直接制御することにより,胚着床の過程における免疫寛容の成立にも重要な役割を果たしていることを明らかとした.
ISSN:0022-8400
2185-3851
DOI:10.5361/jkmu.72.11