ペニシリン耐性肺炎球菌髄膜炎の1例と小児より分離された肺炎球菌抗菌剤感受性の検討
近年わが国においてもペニシリン (PC) 耐性肺炎球菌の分離が増加傾向にあり, 1988年にはPC耐性肺炎菌髄膜炎の第1例が報告された. 我々は第3病日にdeathonarrivalの状態で死亡したPC耐性肺炎球菌髄膜炎の1歳2ヵ月男児例を経験した. 髄液・血液より分離されたS. pneumoniaeの最小発育阻止濃度 (MIC) は0.6μg/mlとPC耐性であった. 当院において1985~1988年に小児より分離された肺炎球菌163株の抗菌剤感受性を検討した. penicillin G (PCG), ampicillin (ABPC), cefotaxime (CTX), imipenem...
Saved in:
Published in | 感染症学雑誌 Vol. 64; no. 6; pp. 725 - 733 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.06.1990
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0387-5911 1884-569X |
DOI | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.64.725 |
Cover
Summary: | 近年わが国においてもペニシリン (PC) 耐性肺炎球菌の分離が増加傾向にあり, 1988年にはPC耐性肺炎菌髄膜炎の第1例が報告された. 我々は第3病日にdeathonarrivalの状態で死亡したPC耐性肺炎球菌髄膜炎の1歳2ヵ月男児例を経験した. 髄液・血液より分離されたS. pneumoniaeの最小発育阻止濃度 (MIC) は0.6μg/mlとPC耐性であった. 当院において1985~1988年に小児より分離された肺炎球菌163株の抗菌剤感受性を検討した. penicillin G (PCG), ampicillin (ABPC), cefotaxime (CTX), imipenem (IPM), vancomycin (VCM) は良好な抗菌力を示した. PCGのMIC 0.1μg/ml以上のPC耐性株は163株中12株7.3%に認められ, すべて中等度耐性株であった. 年次別PC耐性率は1985年12.5%, 1986年1.3%, 1987年0%, 1988年19.0%であり, 1988年には増加が認められた. PC感受性株・耐性株別に中枢神経系感染症に使用しうる抗菌剤のMIC分布・MIC90を検討した. PCG, ABPCのPC耐性株のMIC90は1.56μg/mlであり中枢神経系感染症に使用するのは危険を伴うと考えられた. IPMの耐性株のMIC90は0.1μg/ml, VCMでは0.4μg/mlであり, 耐性株での抗菌力の低下はないかあってもわずかであった. PC感受性株・耐性株別に経口抗菌剤のMIC分布・MIC70を株討した. 耐性株において抗菌力の低下は認められるが, 他剤と比較するとPCG, ABPCの抗菌力がより良好であった. |
---|---|
ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.64.725 |