大量のガス産生を伴った化膿性肝膿瘍の1例

ガス産生感染症として従来はClostridium属によるガス壊疸が代表的であったが, 最近はガス壊疸においても非Clostridium性のものの増加が指摘され, その他気腫性腎孟腎炎や気腫性胆嚢炎などの報告も散見される.肝はその豊富な血流のためかガスが貯留しにくいと言われ, ガス像を伴う肝膿瘍の報告は稀である. 最近著者らは, 糖尿病患者に発症した大量のガス像を伴う化膿性肝膿瘍を経験したので, 若干の考察と共に報告した. 症例は不明熱として入院した62歳の女性.著明な白血球増多と共にGOT, GPT, ALP, LAPの上昇があり, 腹部単純写真で右横隔膜下方にガス像が認められた.腹部エコーに...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 59; no. 4; pp. 411 - 417
Main Authors 小松, 裕司, 宮本, 修, 南川, 博司, 高松, 健次, 西本, 正紀, 中野, 義隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.04.1985
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.59.411

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Summary:ガス産生感染症として従来はClostridium属によるガス壊疸が代表的であったが, 最近はガス壊疸においても非Clostridium性のものの増加が指摘され, その他気腫性腎孟腎炎や気腫性胆嚢炎などの報告も散見される.肝はその豊富な血流のためかガスが貯留しにくいと言われ, ガス像を伴う肝膿瘍の報告は稀である. 最近著者らは, 糖尿病患者に発症した大量のガス像を伴う化膿性肝膿瘍を経験したので, 若干の考察と共に報告した. 症例は不明熱として入院した62歳の女性.著明な白血球増多と共にGOT, GPT, ALP, LAPの上昇があり, 腹部単純写真で右横隔膜下方にガス像が認められた.腹部エコーにより肝右葉内にhyperechoicとhypoechoicな部分の混在する腫瘤像が描出され, CTでair-fluid levelを有する大量のガス像を伴う低吸収域がみられ, ガス産生性肝膿瘍と診断した.直ちに開腹によるチューブドレナージを施行し, 全身及び局所化学療法により軽快した.血液と膿からはKlebsiella pneumoniaeカミ分離され, ガスに悪臭は感じられなかった.同時に右側の全眼球炎も併発しており, 眼球摘出術が施された.肝膿瘍の発症経路は不明であり, 全眼球炎は肝膿瘍による転移性膿瘍形成と考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.59.411