虫垂炎穿孔と鑑別困難だったサイトメガロウイルス腸炎による回腸穿孔の1例

患者は62歳,男性.多発性骨髄腫に対して化学療法中に発熱を認めた.造影CTで,回盲部周囲膿瘍と,その内部に断裂した虫垂を認め,穿孔性虫垂炎と診断し,緊急で回盲部切除を施行した.術後創傷治癒は良好であったが,発熱と下痢が遷延した.術直前に提出したサイトメガロウイルス(以下,CMVと略記)アンチゲネミアが高値であることが判明したため,CMV腸炎と診断しバルガンシクロビルを投与した.翌日には解熱し下痢も軽快した.摘出検体では,回腸末端に膿瘍と交通する深い潰瘍を認め,病理組織学的には潰瘍周囲にCMV感染細胞を認めた.臨床経過・病理結果から,CMV腸炎による回腸穿孔を契機に,虫垂は二次的に断裂したと考え...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 80; no. 12; pp. 2190 - 2195
Main Authors 高橋, 一広, 小田, 竜也, 宮﨑, 貴寛, 倉田, 昌直, 榎本, 剛史, 小松﨑, 修平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2019
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.80.2190

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Summary:患者は62歳,男性.多発性骨髄腫に対して化学療法中に発熱を認めた.造影CTで,回盲部周囲膿瘍と,その内部に断裂した虫垂を認め,穿孔性虫垂炎と診断し,緊急で回盲部切除を施行した.術後創傷治癒は良好であったが,発熱と下痢が遷延した.術直前に提出したサイトメガロウイルス(以下,CMVと略記)アンチゲネミアが高値であることが判明したため,CMV腸炎と診断しバルガンシクロビルを投与した.翌日には解熱し下痢も軽快した.摘出検体では,回腸末端に膿瘍と交通する深い潰瘍を認め,病理組織学的には潰瘍周囲にCMV感染細胞を認めた.臨床経過・病理結果から,CMV腸炎による回腸穿孔を契機に,虫垂は二次的に断裂したと考えられた.本症例は術前に穿孔性虫垂炎と鑑別することは困難だった.免疫不全患者の消化管穿孔では,頻度は少ないがCMV腸炎も鑑別に挙げ,診断,治療につなげる必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.80.2190