輸血を契機に後天性血友病Aを発症し手術時期に苦慮した胃癌の1例

輸血後に発症した後天性血友病は極めてまれである.周術期発症例は致命的であることが多いが,治療に急を要する高度進行悪性腫瘍手術と出血のコントロールの両立は容易ではない.症例は65歳の男性で,高度貧血を伴う進行胃癌で紹介となった.初診時APTT値は正常であったが,輸血後徐々に延長した.血友病を念頭に鑑別診断を行ったが,出血を伴う進行胃癌と考えられ,手術を先行した.術後2日目に腹腔内出血を認め,また,同日に第VIII因子抑制因子陽性と判明し,後天性血友病と診断した.活性型第VII因子製剤を中心に治療を開始したが,術後7日目には吻合部出血を認め,内視鏡的に止血した.以降は出血傾向無く術後58日目に退院...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 75; no. 11; pp. 3046 - 3050
Main Authors 田中, 雅夫, 山田, 大輔, 大内田, 研宙, 仲田, 興平, 伊達, 健治朗, 永井, 英司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2014
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.75.3046

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Summary:輸血後に発症した後天性血友病は極めてまれである.周術期発症例は致命的であることが多いが,治療に急を要する高度進行悪性腫瘍手術と出血のコントロールの両立は容易ではない.症例は65歳の男性で,高度貧血を伴う進行胃癌で紹介となった.初診時APTT値は正常であったが,輸血後徐々に延長した.血友病を念頭に鑑別診断を行ったが,出血を伴う進行胃癌と考えられ,手術を先行した.術後2日目に腹腔内出血を認め,また,同日に第VIII因子抑制因子陽性と判明し,後天性血友病と診断した.活性型第VII因子製剤を中心に治療を開始したが,術後7日目には吻合部出血を認め,内視鏡的に止血した.以降は出血傾向無く術後58日目に退院となった.本症例では手術時期の選択に関しては若干反省すべき点があるが,術前から本疾患を念頭に置き,専門医と治療に当たることで救命できた.本疾患に対する外科医の認識と,血液病専門医とともに治療を行うことが重要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.75.3046